====== 揺れる忠誠 ====== {{:揺れる忠誠.jpg?400|}} フィオルダス家の広間には重い空気が漂っていた。庭から差し込むわずかな陽光も、家族内で広がる不安を和らげることはなかった。[[マルコム・フィオルダス|マルコム]]の弟、[[セドリック・フィオルダス|セドリック]]は冷静な瞳で兄を見つめ、「兄上、今の状況では[[リディア・フィオルダス|リディア]]が何を考えているのか見極める必要があります。我々フィオルダス家の安全と信頼を守るためにも」と厳しい口調で言った。 マルコムは少し眉をひそめたが、すぐに穏やかな声で答える。「セドリック、分かっている。だが、リディアは単なる他家の者ではない。我々にとって大切な家族だ。彼女の行動は、クレスウェル家を守るためでもある。焦りや疑念から家族を裂くことは避けるべきだ」 周囲にいた家族の視線が交錯し、緊張が一瞬にして高まる。[[エドガー・フィオルダス]]はその場を見つめ、深い息をついた。「マルコム、セドリック、お前たちの言葉はどちらも一理ある。だが、家族の結束こそが何より重要だ。この状況で家族の絆が乱れれば、敵の思う壺だ」 マルコムは父の言葉にうなずき、弟に視線を戻した。「お前の警戒は理解している。だが、リディアの真意を疑うのはまだ早い。彼女が私たちに何を求め、何を守りたいと思っているのかを知ることが先だ」 セドリックは口を閉じ、一瞬逡巡の表情を見せたが、やがて頷いた。「わかりました、兄上。だが、目を離さないでください」 家族の間に生じたわずかな不協和音は、エドガーの重々しい声で一時的に静められたものの、心の奥底に残った疑念は消えなかった。フィオルダス家の中で揺れる忠誠心は、新たな試練への兆しを示しているかのようだった。