====== 秘密の訪問と新たな盟約 ====== {{:秘密の訪問と新たな盟約.jpg?400|}} 夜風が冷たく頬を撫でる中、[[セシル・マーベリック|セシル]]と[[エミリア・マーベリック|エミリア]]は慎重に街の石畳を歩いていた。[[アルカナの灯火]]の拠点に向かうため、周囲を警戒しつつ、暗い路地を抜ける。セシルの鋭い目があたりを見回し、エミリアはその隣で冷静な表情を保ちながらも、心の奥では少し緊張を感じていた。 「ここだな……」セシルが低くつぶやき、エミリアに合図を送る。目の前には古びた建物が立ち並び、注意しなければ見過ごしてしまうような目立たない入り口があった。セシルが扉を軽く叩くと、しばらくして中から目つきの鋭い男が現れた。 「お待ちしておりました。どうぞ中へ」男は抑えた声で促し、夫妻を中に導いた。拠点内は薄暗い蝋燭の光に照らされ、魔法の香りがかすかに漂っていた。 部屋の中央には、[[セラフィナ・カレヴァ]]が立って夫妻を見つめていた。彼女の視線は鋭く、慎重に相手を測るような光を宿していた。「さて、まずは確認させていただきたい。あなたたちがクレスウェル家と密接な関係を持っているという証拠を」 エミリアは胸元から小さな巻物を取り出し、セラフィナに差し出した。「これはクレスウェル家からの紹介状です。レオン・クレスウェルから私たちの存在を保証する文書です。私たちは彼らを守り、共に戦っています」 セシルが続けて言葉を添える。「我々は月の信者たちの動きを探り、クレスウェル家のために情報を集めてきた。あなたがこの協力を必要としているなら、ぜひ情報を共有したい」 セラフィナは一瞬黙り込み、巻物を受け取って視線を走らせた。その後、口元にかすかな微笑みを浮かべた。「どうやら、あなたたちが本物であることは確かね。では、協力の証として、こちらも情報を提供しましょう。月の信者たちの新たな集会地点についての情報です」 エミリアは胸に安堵が広がるのを感じたが、すぐに気を引き締め直した。セラフィナが続けた。「ただし、我々アルカナの灯火も独自の目的がある。これを理解していただかない限り、協力は単純ではないわ」 セシルはゆっくりとうなずき、少しの間黙った後、答えた。「理解した。共通の敵を倒すために、お互いの利益を尊重し合うべきだ」 セラフィナは真剣なまなざしで夫妻を見つめ、「クレスウェル邸に戻り、この情報をアレクサンドルに伝えてください。次の動きは彼の手に委ねられることを」と告げた。 夫妻は静かに立ち去り、夜風に包まれながらクレスウェル邸への道を進んだ。セシルはエミリアの手を軽く握りしめ、新たな戦いへの決意を胸に秘めていた。その静けさの中で、彼らの歩みは新たな協力と挑戦の始まりを予告していた。