====== 縁談復活への試み ====== {{:縁談復活への試み.jpg?400|}} [[エリーナ・クレスウェル|エリーナ]]は、[[リディア・クレスウェル|リディア]]の部屋に静かに入ると、彼女の表情がかすかに曇っていることに気づいた。数年前にリディアとフィオルダス家の縁談話が持ち上がり、そのまま棚上げになっていたが、今またその話が復活しようとしている。エリーナにとって、縁談がリディアにとって負担ではないかと気がかりだった。 「お姉様、その……縁談の話、嫌じゃないですか?」エリーナは勇気を振り絞って尋ねた。 リディアはエリーナの問いかけに、一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。「エリーナ、心配してくれてありがとう。でも、この縁談は私にとって大切な機会なの」 ---- リディアはエリーナの手をそっと取って、自分の想いを伝えるために言葉を選びながら話し始めた。「確かに、この縁談は単なる政略結婚と捉えられても仕方ないかもしれない。でも今の私たちには、剣に頼るだけでは対抗できない相手がいる」 エリーナはその言葉に驚きながらも、リディアの瞳が揺るがない意志で輝いているのを感じ取った。 「フィオルダス家との縁談を通して、私たちはもっと多くの味方を増やし、支え合う力を築いていける」とリディアは続けた。「月の信者たちに対抗するためには、彼らの影響力を超えるだけのものが必要なのよ。そして、それがクレスウェル家の未来を守ることにもつながる」 ---- エリーナは、リディアの言葉を噛み締めるように静かに頷いた。これまで、リディアの戦いの姿勢を見てきたエリーナにとって、その覚悟と強い意志が改めて伝わる瞬間だった。けれども心のどこかで、姉が剣を振るう姿ではなく、政略結婚という形で未来を担うことに不安を感じていたのも確かだった。 「……でも、そういう形でお姉様が誰かのものになるなんて、やっぱり心配です」と、エリーナは小声でつぶやいた。 リディアは再び微笑み、エリーナの肩にそっと手を置いた。「大丈夫、エリーナ。私は誰かに従属するのではなく、協力し合える関係を築こうと思っているの。私たちが信じるものを守るためにね」 ---- リディアは自身の決意をエリーナに伝えることで、彼女に安心感を与えたかった。「もしフィオルダス家がこの縁談を受け入れてくれたなら、それがクレスウェル家の再興にもつながる。そして、それを通して得た力は、私たちが本当に守りたいもののために使うわ」 エリーナはリディアの言葉に心を打たれ、真剣な表情で頷いた。「わかりました、お姉様。私も、あなたが決めた道を応援します」 こうして、リディアの縁談が政略結婚に終わるのではなく、クレスウェル家とその仲間たちの未来に繋がる一歩として再び動き出したのだった。