エリディアムの壮麗な大聖堂、その奥にある荘厳な部屋にガイウス、アンナ、リディアの三人が姿を現した。大理石の床には太陽と月の彫刻が施され、天窓から差し込む光が荘厳な雰囲気を作り出している。ここで待ち受けていたのは、エリディウス教の高位聖職者アルメダ・イストヴァーンだった。銀髪の僧服を纏った彼は、威厳に満ちた表情で一行を迎えた。
「クレスウェル家の皆様、ようこそ。あなた方の訪問は予期しておりましたが、その目的をお聞かせいただけますか?」とアルメダは厳かに声を響かせた。
ガイウスが一歩前に出て、礼儀正しく頭を下げる。「アルメダ殿。我々はクレスウェル家の再興を願い、エリディアム全体の安定と発展に貢献することを誓うために参りました。しかし、そのためにはあなた様の助力が不可欠です」
アルメダは両手を組みながら、静かに耳を傾ける。「具体的にはどのような助力をお求めですか?」
リディアが父に代わり口を開いた。「私たちは信頼と影響力を取り戻すために、精神的支柱としてエリディウス教の支持が必要です。クレスウェル家が受けた不当な仕打ちの真実を知り、再び人々の信頼を得るために力を貸していただけないでしょうか?」
アルメダの目がリディアを鋭く見据えた。「それは容易なことではありません、リディア殿。私が支援を表明すれば、我が身にも危険が及ぶかもしれません。月の信者たちは未だに影響力を持ち、我々の行動を注視しています」
アンナがその場を和らげるように口を挟む。「しかし、アルメダ殿、あなた様は公正で信仰深い方だと多くの信徒が信じております。どうか、エリディウス教の威信を守るためにも、真実を見失わずにいてください」
アルメダはしばらく黙って考え込んだ後、重々しい口調で語り始めた。「確かに、私も月の信者たちの暗躍に懸念を抱いております。だが、それに立ち向かうためには、私自身の信念と立場を明確にする必要があります。あなた方の誠意を信じるべきでしょうか?」
リディアは真っ直ぐにアルメダの目を見つめ、力強く答えた。「クレスウェル家は過去に多くの過ちを背負いましたが、今こそ未来を築く時です。私たちは自分たちだけでなく、エリディアム全体のために力を尽くしたいのです」
アルメダはその言葉に心動かされた様子で、ゆっくりと頷いた。「よろしい。私もエリディアムの未来を見据えなければなりません。私があなた方に協力することを表明しよう。ただし、慎重な行動が求められます。すぐに表立った支援はできませんが、陰ながら助力いたしましょう」
ガイウスは深々と頭を下げ、「感謝いたします、アルメダ殿」と礼を述べた。
リディアは再び胸を張り、決意を新たにする。「これでクレスウェル家再興への大きな一歩となります。アルメダ殿、どうか共にエリディアムを守ってください」
アルメダは穏やかな笑みを浮かべ、「神が導いてくれることを信じています」と静かに答えた。交渉は成功したが、これが今後の戦いの始まりに過ぎないことを三人は痛感していた。