アレクサンドルとリディアの初対面

カストゥムの市場は、異国の品々が行き交い、多様な人々が絶え間なく集う活気あふれる場所だった。その一角で、アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチは冷静な目で人々の動きや噂を探っていた。彼にとって市場は、単なる物の取引の場というよりも、情報と機会が交差する絶好の場所だった。

その日の噂はエリディアムから密かに持ち込まれたという古代の遺物に関するものだった。強力な魔法が封じられているその遺物は、盗賊団の手に渡り、市場で密かに取引される予定だという。アレクサンドルはその情報に興味を抱き、取引現場へ向かうため静かに動き出した。


一方、剣術道場で修業を続けていたリディア・クレスウェルもまた、その盗賊団の噂を耳にしていた。家名を背負う責任感に駆られながらも、剣士として成長しつつある彼女にとって、その遺物は自身の使命を試す機会でもあった。道場での修業の合間を縫って、彼女も密かに動き出していた。

市場の混雑の中で、リディアの鋭い視線はアレクサンドルの姿を捉えた。何か特別な雰囲気を纏う彼の動きは、ただの市場の人混みとは異なって見えた。二人は偶然にも市場の片隅で交差し、お互いの存在に気づく。

「あなたも盗賊団を追っているのか?」リディアが低く問いかけた。

アレクサンドルは軽く頷き、冷静に応じた。「同じ目的を持っているようだな。しかし、アプローチが違うかもしれない」

リディアは少し笑みを浮かべた。「私の方法を否定する気?」

「いいや、ただ、一人で進むより、協力するほうが効果的かもしれないと思っただけだ」アレクサンドルは、彼女の強い意志と自信に興味を持ちながら提案した。

リディアはその言葉を少し考えた後、手を差し出した。「……協力するのも悪くないわね。私の情報も役立つはず」


こうして、二人は共に盗賊団のアジトへ向かうことを決意した。市場の喧騒の中、互いにどこか警戒しつつも、同じ目標に向かって歩み出すことで、冷静さと確かな意志が互いに深い印象を残した。この出会いが、後に彼らの運命を大きく動かすきっかけとなることを、まだ誰も予想していなかった。