フィオルダス家との関係改善への挑戦

クレスウェル邸の応接間に、柔らかな陽の光が差し込んでいた。リディアが無事に帰還した数日後、邸内には久しぶりに希望の息吹が満ちていたが、決して安穏としていられなかった。クレスウェル家の再興に向けた本格的な動きが求められていたのだ。

アンナは、決意を新たにし、夫ガイウスとともに家族を集めた。アンナの瞳には不屈の意志が宿っている。「この数年、私たちはただ待つしかできなかった。でも、今こそ再び前に進む時が来たわ」と、彼女は静かに口を開いた。

ガイウスは腕を組み、深く息をついた。「フィオルダス家との縁談の話は、リディアの失踪によって棚上げにするしかなかったが……今こそ復活を試みるべきだな」

アンナは頷き、机上に広げた書簡を指した。「ええ、私もそう思っています。フィオルダス家はもともと友好関係にあったし、彼らに失望を与えないためにも、こちらから具体的な計画を提案したいのです。リディアもすでに26歳。これ以上、先延ばしにする余裕はないわ」

リディアはその言葉に少し身を固くしたが、母の決意に満ちた表情を見て、静かに理解を示した。アンナは続けた。「フィオルダス家の求めに応じるには、ただ戦いに強い家柄ではなく、家同士の結びつきを強める必要があります。リディア、あなたには負担をかけるかもしれないけれど……この縁談はクレスウェル家のためでもあり、未来の平和のためでもあるの」

リディアは一瞬目を閉じ、深呼吸をした。「母上……私も剣や弓だけでは、この戦いに勝てないとわかっています。私が役に立てるのなら、先方が望む限り縁談を進めてください」

その場にいたガイウスは、娘の覚悟に複雑な思いを抱きながらも、父として彼女の決意を尊重することにした。「アンナ、私たちもフィオルダス家との交渉を誠実に進めよう。ただし、我々の家名を守るためにも慎重さを欠いてはならん」

アンナは再び微笑み、ガイウスの言葉に力強く同意した。「ええ、まずはフィオルダス家に会い、直接我々の誠意を伝えるつもりです。何があっても、クレスウェル家の絆を未来へつなげるために」

こうして、クレスウェル家は再び未来へと歩み出すための具体的な一歩を踏み出した。希望と不安が入り混じる中、彼らは互いに支え合いながら、この困難を乗り越えていく決意を固めていた。