エリディアムのフィオルダス邸に、静かな緊張感が漂っていた。リディアは夫のマルコムの前に座り、深い呼吸をしてから、真剣なまなざしで話し始めた。「マルコム、話さなくてはいけないことがあるの。クレスウェル家の現状と、私たちが直面している危機について」
マルコムはその言葉に顔を引き締め、リディアの言葉を待った。彼は既にレオンの結婚式後にガイウスから状況の概要を聞いていたが、リディアが話す詳細にはさらなる重みがあった。
「私たちが戦っている相手はただの脅威ではないの。月の信者たちは、エリディアム全体、いや、アウレリア全体に影響を及ぼす存在なの」と、リディアは続けた。彼女の声には決意が宿り、マルコムはその気迫に押されるように真剣な表情を浮かべた。
マルコムは沈黙を守りながら話を聞き、やがて静かに口を開いた。「話してくれてありがとう、リディア。君がそこまでのことを背負っている以上、私も見て見ぬふりはできない。ただ……できるだけ家族を巻き込みたくはないんだ」彼の声には、家族を守りたいという強い思いがにじんでいた。
リディアは夫の気持ちを理解し、少しうつむいて頷いた。「私も同じよ。でも、これほどの大きな脅威を前に、誰も完全には巻き込まれずにいられないわ」と、目を見つめ返しながら伝える。彼女の中にある覚悟と、愛する者を守りたい気持ちが交錯していた。
しばらくの沈黙の後、マルコムが深い息を吐き、ゆっくりと口を開いた。「分かった。私たちができることをしよう。ただ、少しでも家族を守りつつ進める方法を考えたい。具体的にこれからどう動くべきか、計画を立てよう」
リディアは微笑み、小さく頷いた。二人は向かい合い、フィオルダス家とクレスウェル家、そしてアウレリア全体を守るために、新たな戦略を練り始めた。その静かな誓いは、これからの試練を共に乗り越えるという絆を強くするものだった。