ロマリウス邸にて、アレクサンドルとマリアナはマリアナの両親との挨拶を無事に終え、少し緊張した空気が和らいだところだった。だが、アレナが定時連絡のためにレオンたちと念話を始めたとき、その穏やかな雰囲気は一変した。
「レオン、こちらアレナです。何か動きがあった?」アレナの声は冷静だが、どこか張り詰めている。
「実は、フィオルダス邸が襲撃された」とレオンの声が緊迫感を帯びて響く。「けれど、リディアが再び剣を取って、見事に敵を退けたんだ」
その瞬間、アレクサンドルの顔に緊張と驚きが走り、視線は自然とリュドミラとマリアナに向けられた。マリアナは息を飲み、リュドミラは一瞬目を伏せたあとにしっかりとアレクサンドルを見つめ返した。
「リディアが……剣を?」マリアナが声を震わせて呟くと、アレクサンドルの唇が少しだけほころんだ。「さすがだ、リディア……」
アレナはすぐにレオンとの念話を終えると、「リディアとも話そう」と発案した。その言葉に全員が頷き、アレナの集中が高まる。
念話が繋がり、リディアの落ち着いた声が響いた。「みんな、無事よ。心配かけてごめんなさい」
「リディア、無事で何よりね!」リュドミラが軽く笑い声を添えて言った。「でも、本当にすごいね。あなたが剣を取ると、あの家も安泰だわ」
「ありがとう、リュドミラ」とリディアが少し笑い声を返した。その中には疲労と誇りが混じっていた。
「リディア、君の勇気はみんなを奮い立たせる」とアレクサンドルが誇らしげに語りかけた。「これからも、共に戦っていこう」
リディアは少しの沈黙のあと、「ええ、共に」と穏やかながら力強い声で返した。