エリディアムの穏やかな午後、クレスウェル邸の大広間にて、リディア・クレスウェルは手元にある正式な書状を見つめていた。その書状には、彼女とフィオルダス家の長男マルコスの婚礼の日程がついに決まった旨が記されていた。緊張が胸の内を走る一方で、リディアはほっとしたように息をついた。
「2年以上も待たせてしまったのに、こうして早く話がまとまったのは幸いだわ」とリディアは微笑みながら呟いた。
彼女の父、ガイウス・クレスウェルはその言葉を聞いて深く頷いた。「リディア、お前が戻ってからのこの2ヶ月間で、外交の手腕をここまで発揮してくれたこと、本当に誇りに思う。クレスウェル家が再び希望を持てるのはお前のおかげだ」
その言葉にリディアは一瞬、感極まりそうになったが、毅然とした表情を崩さなかった。彼女の母、アンナ・クレスウェルも近くに立っており、ガイウスはアンナにも優しく視線を向けた。「そして、アンナ。お前の支えがなければ、私たちは今のように結束を保つことはできなかった。長い年月、本当によく耐えてくれた」
アンナは柔らかく微笑みながら、「私たちの家族がまたこうして希望を持てる日が来たことが何よりです」と返した。母娘の絆がより一層強く感じられる瞬間だった。
リディアは少し考え込むようにしてから、再び前を見据えた。「私はこれからフィオルダス家に嫁ぐことになりますが、その後はクレスウェル家のために自由に動けなくなるかもしれません。だから、今この時、クレスウェル家の一員としてやるべきこと、できることは全力でやり遂げたいのです」
彼女の瞳には強い決意が宿っていた。クレスウェル家の未来のため、そしてエリディアム全体の安定のため、リディアは自らが背負う運命に正面から向き合おうとしていた。
ガイウスは娘の言葉に感動しつつ、力強く頷いた。「そうだな、リディア。お前がクレスウェル家にいる今こそ、この家のために最大限の力を尽くしてほしい。私たちはお前を信じている」
リディアは再び微笑み、家族の支えを感じながら、婚礼の日に向けてさらなる準備を進めることを誓ったのだった。