ルーン・オーブとレティシアの秘めた想い

カストゥムの夜、セシル・マーベリックエミリア・フォルティスは情報を求め、信頼できる情報源であるレティシア・ノルヴィスのもとを訪れた。彼女はカストゥムで古代の知識に精通し、時折その希少な情報を彼らに提供してくれている人物だった。


「レティシア、ルーン・オーブについて少しでも知っていることがあれば教えてほしいんだ」セシルが静かに切り出すと、レティシアは微笑を浮かべ、彼に視線を向けた。

「ルーン・オーブ……、そうね」レティシアは一瞬思案するようにワイングラスを揺らし、どこか遠くを見るような表情で続けた。「実は、アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチがクレスウェル兄妹と共にエリディアムに向かっていると聞いたわ。どうやら両親に会いに行くらしいの」

エミリアは少し驚いた様子で尋ねた。「アレクサンドルが……それもクレスウェル兄妹と一緒に?」

レティシアは目を伏せながら、かすかな笑みを浮かべた。「ええ、彼のことを知っていると、なぜか動きが気になってしまうのよ。特にルーン・オーブに絡んでいるとしたら……」

その言葉にセシルは意図を察したようにうなずいた。レティシアの口調には控えめながらも、どこかアレクサンドルに対する特別な思いが込められているようだった。彼女は直接言葉には出さないが、アレクサンドルがただの知り合い以上の存在であることを示していた。


レティシアはふと窓の外を見つめ、静かに言葉を続けた。「ルーン・オーブは、ただの遺物以上の力を持つかもしれないわ。でも、それを追うことが何をもたらすのか……。そう簡単なことではないわね」

彼女の表情は一瞬だけ曇り、アレクサンドルの安全を案じるような様子が垣間見えた。彼女にとってルーン・オーブは、アレクサンドルの道を左右するかもしれない危険な存在と感じられていたのだ。

セシルとエミリアは礼を述べ、レティシアが語った言葉を胸に刻んで、エリディアムへと向かう計画を進め始めた。レティシアは二人を見送りながら、窓の外に目を向けていたが、その視線の先には、遠くにいるアレクサンドルに向けた静かな思いが込められていた。