エリオットとエリーナはアルカナの灯火の指導者であるセラフィナ・カレヴァとの会談を終え、手にした新たな情報をもとに行動を開始した。彼らの目標は、指定された遺跡に眠る古代の魔法具を確保し、それを使って月の信者たちの動きを封じ込めるための手がかりを得ることだった。しかし、その道は険しく、決して順調とは言えなかった。
遺跡への道中、二人は不安定な山道を進んでいた。苛立ちが募るエリオットは、何度も立ち止まって地図を確認しながら、険しい険路に対してぶつぶつと文句を言った。一方でエリーナは、心の中で焦りを抑え込もうとしていたが、なかなかうまくいかない。
「エリオット、ちゃんと進んでるの?」エリーナが声をかけた瞬間、エリオットの表情が険しくなった。「わかってるって。でも、何度も言わないでくれ。今集中してるんだ」と、苛立ちが隠しきれない調子で返事をした。
エリーナはそれに少しムッとしながら、「私だってこんなに進まないなんて思ってなかったから」と返す。いつもの落ち着いた雰囲気はどこかに消え、二人の間に微妙な緊張が漂い始めた。
そのとき、地面が突然揺れ始めた。二人は驚いて辺りを見回したが、岩の裂け目から這い出してくる巨大な魔獣に気づくのが少し遅れた。魔獣は鋭い牙をむき出しにして吠え、襲いかかってきた。
「エリーナ、下がって!」エリオットは瞬時に判断し、魔法の力を解き放った。青い光の閃光が魔獣に向かって飛び、攻撃をかわすように導いたが、魔獣は力強く突進してくる。
エリーナは震える手を握りしめ、心を落ち着けようとした。「ここぞ」というときに使うと決めていた魔法の力を引き出すため、目を閉じて集中した。しかし、そのわずかな逡巡が彼女の動きを鈍らせた。
「エリーナ、早く!」エリオットが声を張り上げた瞬間、エリーナは覚悟を決め、封じていた魔法を解放した。強烈な光が魔獣を包み込み、攻撃の一瞬を止めた。
だが、魔獣を倒したあとも、二人の間に残ったのは、焦りと苛立ちが生み出したわだかまりだった。エリオットは息を整えながら、「あのとき、なんで迷ったんだよ」と、思わず口にしてしまった。
エリーナの目には悔しさが浮かんだ。「だって、私だって怖かったの!それでも、どうにかしたかったのに……」声は震えていたが、彼女の心には決意も宿っていた。
二人はしばらく無言のまま立ち尽くしていたが、この危機を通じて何かが変わろうとしているのを感じていた。それぞれが抱える不安や焦り、それでも共に進むしかない現実。二人の視線が交わったとき、互いの中にある小さな希望の光が見えたような気がした。