リュドミラ・アラマティアは、エリオット・ルカナムたちと合流してから数日が経っていたが、自分自身を孤高の存在だと思い込んでいた。超能力者としての自負もあり、周囲に心を開くことは少なかった。エリオットたちと協力する必要性は理解していたが、それでも一線を引いている感覚があった。
一方、アレナ・フェリダは同じ超能力者でありながらも、社交的で明るい性格を持ち、初対面のリュドミラにも自然に接してきた。彼女の持つ自由で軽やかな空気感は、リュドミラにとって新鮮だった。
ある夜、彼らが滞在する拠点で、アレナはリュドミラに話しかけた。「ねえ、リューダ、あなたの力ってすごいわよね。私も同じように超能力を使うけど、あんなに精密にはできないわ」
リュドミラは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静な表情に戻し、「そうかしら。私はただ、自分の力を磨くことに集中していただけよ」と答えた。
アレナはその答えに興味を示し、さらに会話を続けた。「でも、やっぱりすごいわ。ねえ、今度一緒に練習してみない?互いに学び合えることがあるかもしれないじゃない」
リュドミラは最初、心の中でためらった。これまで他人に自分の力を見せることには抵抗があったからだ。しかし、アレナの笑顔と真剣な眼差しを見ているうちに、彼女の心は少しずつほぐれていった。
「……それも悪くないかもしれないわね」リュドミラが静かに答えると、アレナは満面の笑みを浮かべた。
その後、二人は拠点の広場で互いに力を見せ合い、技を教え合うようになった。リュドミラは初めて、同じ女性超能力者としての共感を感じ、孤高の存在ではなく、仲間と共に成長する楽しさを知った。
その様子を少し離れた場所から見ていたエリオット・ルカナムは、思わず微笑んだ。「リューダがあんな風に心を開くなんて、珍しいな」彼は彼女の変化に驚きながらも、どこか嬉しそうだった。
隣にいたカリス・グレイフォークもまた、二人を見ながら微笑を浮かべた。「やっぱりアレナの明るさは、誰にでも影響を与えるな。リュドミラも、少しずつ心の壁を下ろしていくのかもしれない」
エリオットは頷き、「アレナには不思議な魅力があるからな。リュドミラが少しでも楽になってくれれば、それでいい」と、静かに言葉を返した。
その夜、リュドミラは一人で星空を見上げながら、ふと考えた。自分は孤独ではないかもしれない。同じ力を持つ者と共に過ごし、互いに助け合うことができる――その可能性に、彼女の胸には小さな希望が芽生えていた。