エリディアムのクレスウェル家の邸宅。リディアは、父ガイウスと母アンナを前に、自らが描いた再興への具体的な計画を話し始めた。部屋の重厚な静けさに、彼女の言葉が一つ一つ確かに響いていく。
「エルドリッチ商会との協力は、クレスウェル家の経済的基盤を復活させるための第一歩です」リディアは毅然とした表情で語った。「アレクサンドルがエルドリッチ商会を継ぐことで、私たちは商業のネットワークを活用し、交易を活発化させることができます。この協力体制を確立することで、エリディアムの経済は安定し、復興の兆しが見えてくるでしょう」
しかし、ガイウスは眉を寄せて慎重に尋ねた。「エルドリッチ商会の協力が本当に得られるのか? 現状ではまだ確約はないはずだ」
リディアは深く息をつき、父の懸念に応えるように頷いた。「そうですね、お父様。確かにエルドリッチ商会の協力は現時点では保証されていません。ただ、アレクサンドルがあの場で正式に継承する意志を示した以上、彼は本気で商会を動かすつもりでいるはずです」
その言葉には揺るぎない自信があった。黎明の翼で共に戦い、数々の困難を乗り越えてきたアレクサンドルとの信頼関係が、彼女の確信の源だった。
「私は、アレクサンドルを信じています」リディアは強いまなざしを父に向けた。「彼は決して軽い気持ちでエルドリッチ商会を継ぐと決めたのではありません。私たちクレスウェル家のため、そしてエリディアム全体のために力を貸してくれると信じています」
ガイウスは娘の言葉をじっと受け止め、沈思黙考の末に口を開いた。「なるほど、アレクサンドルとの信頼に基づく計画か……。それがただの希望的観測でないことを、今後の動きで証明しなければならないな」
「そうです、お父様」リディアは熱心に頷いた。「経済的にはエルドリッチ商会との協力、外交的にはフィオルダス家との縁談。この二つを柱に据えて再興を図るつもりです。そしてリヴァルド・ケレンには、エリディアム全体が受ける利益を示して協力を求めます」
母アンナが目を細めて静かに言った。「リディア、あなたがここまで真剣に考えているのなら、私たちも全力で支えるわ」
リディアは心の中で力強く自分に言い聞かせた。これがクレスウェル家再興の始まりだ。そして、この計画を成功させるために、彼女はこれからも全力を尽くすと固く誓った。