カストゥムへの出発の朝。エリディアムの空は夜の名残をまだ少し残しながらも、東の空が薄紅色に染まり始めていた。アレクサンドルは愛馬に荷物をくくりつけ終えると、隣で支度を整えるマリアナに目をやった。
「準備はできたか?」と彼が優しく尋ねると、マリアナは小さく微笑んで「もちろん」と頷いた。その手を握ったアレクサンドルは、これから始まる旅の緊張を感じつつも、彼女の手の温もりに力をもらっていた。「一緒なら大丈夫」とマリアナはささやき、アレクサンドルに勇気を与えた。
リュドミラも準備を終えて、マントを軽く羽織りながら近づいてきた。「旅立ちの朝は、いつも新しい冒険が待っている気がするわね」と笑みを浮かべるが、その瞳には真剣な覚悟が見て取れた。
アレナは少し離れた場所で仲間たちを見守っていた。これからの旅で念話を使い、遠くの仲間たちとの連絡を支える役割を果たす彼女もまた、その責任を感じているようだった。
出発前、アレクサンドルたちは見送りに来てくれたレオン、ガイウス、アンナ、そしてカリスに向き合った。アレクサンドルは深く頭を下げて、感謝と別れの挨拶を告げた。
「レオン、カリス、しばらくクレスウェル邸を頼む。ここには大事な家族と仲間たちがいるから」
レオンは笑顔で「任せてくれ。お前たちの帰りを楽しみにしている」と力強く答え、カリスも隣で「心配するな。ここは俺たちが守る」と頼もしく頷いた。
ガイウスはアレクサンドルに厳しい目を向けたが、「お前たちが築き上げてきた信頼を無駄にするなよ」と静かに諭した。その一言には父としての思いがこもっており、アレクサンドルはその重みを受け止めて深く頷いた。
アンナは優しく微笑んで「アレクサンドル、マリアナ、どうか無事でいてくださいね。あなたたちの力はこれからも必要ですから」と励ましの言葉をかけた。マリアナも「ありがとうございます」と感謝を込めて頭を下げた。
出発の瞬間が近づくと、アレクサンドルは一度振り返り、「では、行ってきます」と告げた。こうして一行はエリディアムの街を後にし、新たな試練と出会いを求めて進んでいく。
マリアナは心の中で「あなたがいる限り、私は強くなれる」とアレクサンドルに向けて静かに誓いを立てた。その思いは誰に伝わることもなかったが、彼女自身の力となっていた。
リュドミラも空を見上げながら、「どこまでも未知の冒険が続いていくのね」とつぶやき、その瞳には決意が輝いていた。エリディアムに残るレオンとカリス、そして仲間たちの絆を背に、アレクサンドルたちは新たな一歩を踏み出していった。