カストゥムに着いた翌日の午後、アレクサンドルとマリアナはアレナ、リュドミラと共に、サラ・ルカナムとレティシア・ノルヴィスに会いに行った。彼らはカストゥムでの滞在先に向かい、帰還の報告と留守中に商会や業務を預かってもらったことへの感謝を伝えるためだった。
「サラ、レティシア、お二人とも本当にお世話になりました。私たちが不在の間も、安心して任務を進めることができました」とアレクサンドルが言い、マリアナもその言葉に頷いた。サラは笑顔を浮かべ、「あなたたちが無事に戻ってきて本当によかったわ。私たちは何とか務めを果たしただけよ」と返した。
その場でリュドミラはサラに向かって言葉を続けた。「エリオットのことですが、彼は任務中です。終わればエリディアムに戻るでしょう。そして、彼は婚約者と一緒に帰ってくるはずです」と淡々とした声に少しイタズラっぽい笑みを添えた。
「婚約者ですって?」とサラは目を見開いて驚いた様子を見せた。リュドミラの微笑には冗談めいた色があり、部屋の空気がわずかに和んだ。アレナも口元に微笑を浮かべて、サラの驚きを楽しんでいる様子だった。
続いて、リュドミラはレティシアにも向き直り、丁寧にお礼を伝えた。「レティシアさん、あなたの支えには本当に感謝しています。私たちにとって大きな助けとなりました」
レティシアは少し照れたような笑顔を見せ、「こちらこそ、こうしてみなさんが戻ってきて安心しました。これからも私にできることがあれば、何でも言ってください。アレクサンドル、あなたのために役立つことがあるのなら、力になりたいのです」と真剣な眼差しをアレクサンドルに向けた。その言葉には未練ではなく、純粋な好意と支えたいという強い気持ちが込められていた。
アレクサンドルはレティシアの言葉を受け取り、静かに頷いた。「ありがとう、レティシア。君の協力はこれまでもこれからも、僕たちにとって大きな支えだ」
部屋は一瞬の静寂に包まれたが、その空間には信頼と友情が温かく流れていた。アレクサンドルたちは、新たな一歩を踏み出すための力を、確かに感じ取っていた。