月夜に照らされたエリディアムの街の一角。リュドミラは慎重に群衆の中を歩きながら、ひとりひとりの顔や仕草を観察し、サイコメトリーを使う準備を整えていた。周囲の空気は張り詰め、いつ誰が裏切り者として動き出すかわからない緊迫感に包まれている。
アリーナは少し離れた場所で待機し、心を落ち着けるように深呼吸をした。彼女の念話は準備万端で、リュドミラとレオンの動きを常に把握できる状態だ。ふと彼女の視界の端に、潜入者の一人が信者と親しげに話す姿が映った。アリーナはその瞬間、心臓が跳ね上がるのを感じた。
「お姉さん、危険人物が現れたようです。注意して」アリーナの念話は冷静でありながらも、その声の裏には緊張が走っている。
リュドミラはアリーナの警告を受け、無駄のない動きで注意を逸らさぬよう接触を続けた。そして、ある男の手に触れた瞬間、冷たい波がリュドミラの中を駆け抜けた。男は見かけ上は普通の信者に見えたが、その内面は嫉妬と権力欲で渦巻いていた。
「レオン、危険人物を確認。位置は街の北側」リュドミラは冷静に報告し、そのまま男から離れると、自然な動きで次の場所へと向かう。
レオンはアリーナからの報告を受け、瞬時に次の行動を決断した。「リューダ、引き続き監視を頼む。アリーナ、仲間に情報を広げて」リーダーとしての判断を下すレオンの目には、戦場で鍛え上げられた鋭い光が宿っていた。
アリーナは念話を駆使し、即座に他の仲間に知らせた。その迅速な対応は緊張の中にも仲間を守りたいという彼女の決意を感じさせた。