冒険者が行き交う都市カストゥムで、黎明の翼は新たな依頼を受けて南方へと向かおうとしていた。そこには、闇に潜む勢力の痕跡があり、その探索と対処が求められている。新しい冒険に備え、エリーナをはじめメンバーたちは期待と緊張の入り混じった表情を見せていた。
黎明の翼の一行は、出発の前夜、宿で情報を集めていた。宿屋の主人オスカー・フィルベルトから、「南の交易路では近頃、特に危険な魔物や盗賊が現れている」との情報が入る。
「わかりました。気を引き締めて向かうことにします」アレクサンドルはオスカーに礼を述べ、メンバーたちに「早めに休んで明日に備えよう」と声をかけた。
翌朝、意気揚々と旅立つ一行に、不安そうな顔をしていたエリーナがエリオットに尋ねる。「ねえ、何かに襲われたら……私、皆の役に立てるかな?」
エリオットは柔らかく笑い、「エリーナ、君がいると皆安心する。大丈夫、君ができることをやればいい」と励ました。
旅の途中、彼らは漁師のエルザ・バルトという女性に出会う。彼女は仲間が何者かに襲われて負傷した場所から戻ってきたばかりだ。険しい顔つきで、一行に警告する。
「気をつけるんだ。あの先に潜むものはただの獣じゃない。仲間が怪我をしてね……まだ私の心には恐怖が残っている」
「エルザさん、もしよければ一緒に行動しませんか?」とアレクサンドルが提案する。彼女は一瞬考え込んだが、すぐに頷いた。「いいだろう、でも、私の役目は案内だけだ。戦うのはそちらに任せる」
クライマックス: 夕方、森の奥に踏み入った瞬間、異様な冷気が漂い、木々の間から低い唸り声が響いた。突如、獣のような影が姿を現し、鋭い牙と爪で一行を襲う。
「来たぞ、全員気をつけろ!」アレクサンドルはすぐに弓を構え、冷静に矢を放つ。しかし、魔物は勢いを緩めず突進してくる。
エリーナは一瞬躊躇したが、仲間たちが勇敢に戦う姿を見て、剣を構えた。エリオットが「エリーナ、背後からサポートを頼む!」と指示し、カリスが前方で魔物を牽制する。
エルザも漁具で魔物の足を絡め取り、エリーナが機を見て一撃を加える。カリスが最後にとどめを刺すと、魔物は重々しく倒れ、あたりは再び静けさに包まれた。
エリーナは息を切らしながら、「私、ちゃんと役に立てたかな……」と少し不安げに呟いた。
アレクサンドルは満足そうに頷き、「エリーナ、君の勇気は確かだった。誰もが一人ではなく、支え合っているんだ」と彼女の肩に手を置いた。
戦いの疲れが体に残る中、一行は少しだけ休息を取ることにした。エリオットが倒れた魔物の痕跡を見つめながら、「何かがまだ潜んでいる気がする……この先にはさらなる危険があるかもしれない」と小声でつぶやいた。
アレクサンドルは少し前を見据え、「だが、私たちはここで立ち止まるわけにはいかない。前に進もう」と皆を励ます。
エルザはふと笑みを浮かべ、「こんな強い連中と一緒なら、案外、あの場所まで戻れるかもしれないな」と言い残して一行から離れ、来た道を戻っていった。