同盟の終焉

エリディアムの冷たい風が、クレスウェル家のかつての誇りだった広間に吹き抜ける中、ガイウス・クレスウェルは、かつての戦友であり同盟者だったアレクシウス・レオニダスとの会見に臨んでいた。二人は長い付き合いを持ち、数々の戦いを共にしてきた。だが、今の広間に漂う空気には、かつての友情や信頼とは異なる、冷え切った重圧があった。

アレクシウスは静かに椅子に腰掛け、深い皺が刻まれた額に手を置きながら、疲れた様子で口を開いた。「ガイウス、これ以上、我が家は君たちに協力することができない」その言葉は、彼の立場を示す冷徹な現実を語っていたが、その表情には苦渋が滲んでいた。

ガイウスは拳を握りしめ、辛うじて平静を保っていた。「アレクシウス、君とは長い付き合いだ。共に戦い、共に血を流した仲だ。なぜ、今になって離れていくのか?」

アレクシウスは一瞬、目を逸らしたが、再びガイウスの目を真剣に見据えた。「ガイウス、私は君を信じている。だが、クレスウェル家が標的になっている今、我々が肩を並べれば、レオニダス家も同じ運命を辿ることになる。月の信者たちは、単なる脅威ではない。彼らはすでにエリディアム全体に浸透している。君を支援すれば、我々もその標的となるだろう」

その言葉に、ガイウスの表情は険しくなった。「私はクレスウェル家を守るために全力を尽くしている。それでも、君はそれを理解してくれないのか?」

アレクシウスは静かに首を振り、その目に悲しみが浮かんでいた。「私は理解している、ガイウス。だが、私の家族も私にとって大切だ。私の責務は、彼らを守り、レオニダス家を存続させることだ。もし、君に協力すれば、我が家は危機に陥るだろう。それは、避けられない現実だ」

ガイウスは深く息を吸い、目を閉じた。「わかった、アレクシウス。君の立場も理解する。だが、君が去ったあと、私たちはどうなる?私は孤立し、クレスウェル家は消されるだけだ。それでも君は、見て見ぬふりをするのか?」

アレクシウスは言葉に詰まり、しばらくの沈黙が流れた。「……すまない、ガイウス。君がいかに正しいことをしていると信じていても、私にはリスクを取ることができない」その言葉は、重く、冷たく響いた。

ガイウスは肩を落とし、静かに微笑んだ。「もういい、アレクシウス。君の決断を尊重するよ。我々は互いに異なる道を選ぶしかないのだな」

アレクシウスは立ち上がり、深く頭を下げた。「私は、君がこの困難を乗り越えることを祈っている」その声は真摯であり、かつての友情を示す最後の言葉だった。

アレクシウスが去っていった後、ガイウスは広間に立ち尽くし、ただ静かな沈黙の中で彼の背中を見送った。広間の冷たい風が、彼の孤独と絶望を一層際立たせた。かつての盟友が次々と離れていく中で、彼はますます孤立していくクレスウェル家の運命を感じ取っていた。