ロマリウス邸を後にして数日、アレクサンドル、マリアナ、リュドミラ、アレナ、そして新たに加わった吟遊詩人リューシスは、カストゥムへの道を進んでいた。夕方、宿営の準備を整えていたとき、リュドミラは突然立ち止まった。何か、心の中に微かな声が響いたのだ。最初は風の音かと思い、信じられなかった。
「姉さん……聞こえる?」
その声にリュドミラの心臓が高鳴った。懐かしくも思えるその声は、妹のアリーナに違いなかった。リュドミラは瞬時に念話を意識し、心を集中させた。
「アリーナ……本当にあなたなの?」
声は途切れ途切れだったが、確かにアリーナのものだった。「お姉さん、私はカストゥムに向かっている。会いたいの」
リュドミラの驚きは隠せなかった。彼女の心に広がる驚きに気づいたアレクサンドルが眉を寄せた。「リュドミラ、どうした?」
「アリーナからの念話よ」彼女は震える声で答えた。「彼女がカストゥムに向かっているみたい」
その言葉にアレナも目を見開いた。「アリーナが念話を?それはすごいわ」彼女は興奮した様子で続けた。「まさか、彼女も念話の才能を…」
マリアナは微笑を浮かべて言った。「それは新たな希望ね。私たちにとっても大きな力になり得るわ」
リュドミラの胸には喜びと同時に、妹を戦いに巻き込んでしまう不安が入り混じっていた。「アリーナ、すごいわ。でも、あなたが安全であることが一番大事なの」
アリーナの声は小さくも力強かった。「私はもう決めたの。カストゥムで会いましょう。話があるから」
リュドミラは心の奥底で湧き上がる感情を抑えつつ、優しく答えた。「わかったわ。カストゥムで待っている」
アレクサンドルがその様子を見つめ、重々しく頷いた。「これは良い兆しだ。アリーナが加わることで、私たちに新たな希望と力がもたらされるかもしれない」