エリディアムの街の郊外、寂れた廃屋の前に立つリディア・クレスウェルは、冷たい風が吹き抜ける中でも表情を引き締め、背筋を伸ばしていた。共に構えるアレクサンドル、エリオット、そしてカリスも、それぞれの武器を手に固い決意を宿している。ここは、クラヴェルス一派の協力者たちが活動を指揮していたとされる拠点。薄暗い窓から漏れる明かりが不気味に揺れ、内部に潜む危険をほのめかしている。
「リディア、この屋敷の中には彼らの手先がいるはずだが、慎重に進もう」アレクサンドルが低い声でリディアに言った。
リディアは彼に一度頷くと、力強く答えた。「ええ、私たちにはこの影を振り払う理由がある。これ以上、彼らの陰謀でエリディアムの人々が苦しむのを黙って見ているわけにはいかない」
カリスは少し離れた位置で、刃を手にしながら周囲の気配を探っていた。「向こうの二階の窓に見張りがいるな、エリオット。魔法で気を逸らせるか?」カリスの問いかけに、エリオットは静かに頷き、集中して杖を振った。
やがて、遠くで小さな閃光が瞬き、屋敷の中から騒ぎ声が聞こえた。リディアはその瞬間を逃さず、先頭に立って屋敷内へと踏み込んだ。階段を駆け上がると、数人の男たちが驚いたようにこちらを振り返り、即座に武器を構えた。目つきは鋭く、戦意が漲っている。
「クラヴェルス一派の命令でここまで暗躍してきたのはお前たちか!」リディアが鋭い声で問いかけると、男たちの一人が嘲笑を浮かべた。
「お前たちには関係ない。ここで全員を黙らせてやる、それが我らの役目だ」男は短剣を構え、リディアに突きかかった。
リディアは冷静にかわし、隙を見て剣を一閃させた。その動きは流れるようで、力強さと正確さを兼ね備えている。彼女の剣が男の防御を打ち破り、彼の武器を弾き飛ばすと、男はバランスを崩して床に崩れ落ちた。
後方からはアレクサンドルが弓を構え、敵の隙を逃さず次々に矢を放つ。その間にも、エリオットは魔法で敵の動きを封じ、カリスがその隙に敵を片付けていく。激しい戦闘が繰り広げられる中で、リディアの目には戦士としての確固たる意志が宿っていた。
ふと、残る一人が怯えた表情で後退しながら言った。「どうせ、影から逃れることはできない。クラヴェルス一派はお前たちが思っているほど小さくない!」
リディアはその男を鋭く見据え、静かに言い放った。「ならば、その影と共に消え去る覚悟をしてもらうわ」その言葉には、彼女の覚悟がにじみ出ていた。
やがて最後の敵が倒れると、屋敷には静寂が訪れた。黎明の翼のメンバーたちは疲労の色を見せながらも、互いの存在に支えられながら、廃屋の中を後にする。リディアは歩きながら、ふとアレクサンドルに言った。「これで少しは、エリディアムの人々に安らぎを取り戻せるかしら」
アレクサンドルは彼女を見つめ、穏やかな微笑みを浮かべて頷いた。「そのためにここまで来た。私たちの役目は、ただの戦いではなく、希望の光を取り戻すことだ」
それぞれの心に静かな達成感を抱きながら、彼らは新たな一歩を踏み出す。影との戦いは終わったが、この勝利がエリディアムに平和をもたらすための第一歩であることを、誰もが確信していた。