セヴェルス・カルディナは、壮麗な大聖堂の暗がりに立っていた。彼の背後には月明かりがステンドグラスを通して差し込み、彼の顔に冷たい光を落としていた。聖堂の奥深くにいると、まるで神の目から逃れ、完全に孤立したかのような感覚に包まれる。それは、彼にとって計画を進めるのに最適な場所だった。
彼は周囲に誰もいないことを確認し、足元の石畳に目を落とした。そこには信者たちが並んで祈りを捧げる姿が浮かび上がるように思える。「神の言葉は人々を導くが、影のささやきは彼らの心に真実を植え付けるのだ」と、彼は小さく呟いた。
その夜、彼の前には数名の聖職者が集まっていた。信頼できる者たちであり、セヴェルスが信者たちに影響を及ぼすための拠点としている者たちだった。彼らにとって、セヴェルスは神の意志を伝える存在であり、疑いの余地はなかった。
「皆、最近のクレスウェル家の動向を耳にしているだろう」セヴェルスは静かに語り始めた。彼の声は落ち着いており、だがその言葉には冷徹な確信が宿っていた。「彼らは異端教団と密かに関与しているという噂がある。月の信者たちがその証拠を掴んだという報告もあるのだ」
聖職者たちは驚きの表情を浮かべ、ざわつき始めた。一人の若い聖職者が口を開いた。「セヴェルス様、それは本当なのでしょうか?クレスウェル家は長い間、教会と友好関係にあるはずでは……」
セヴェルスはその若者の目を鋭く見据え、言葉を切り出した。「信仰とは、表面だけでは測れないものだ。クレスウェル家が表向きは教会に忠実であるように振る舞っていても、裏で何をしているかは別の話だ。我々は慎重に見極める必要がある」
若い聖職者は一瞬戸惑い、次に神妙な表情で頷いた。セヴェルスは、彼らの心に疑念の種が確実に植え付けられたことを感じ取り、満足げに微笑んだ。
その後、彼は一般信者たちとの礼拝で同様の噂を流すことにした。信者たちの前で祈りを捧げるとき、彼は慎重に言葉を選んだ。「私たちの愛するエリディアムには、純粋な信仰を脅かす影が潜んでいます。その影は、表向きは善良な家柄を装っていますが、異端の力に手を染め、我々の信仰を汚そうとしているのです」
信者たちの間に、低いざわめきが広がった。セヴェルスはその反応を楽しみながら、さらに続けた。「私たちは心を清らかに保ち、異端の誘惑に惑わされないようにしなければなりません。そして、影の正体が明らかになるその時まで、我々は祈りを絶やさず、神の導きを信じ続けましょう」
礼拝が終わると、信者たちはその言葉に深くうなずきながら帰路についた。セヴェルスはその光景を見つめ、心の中で静かに笑った。「こうして人々は、我々の計画に沿って動いていく。クレスウェル家の名誉は徐々に崩れていき、最終的には彼ら自身が信者たちの手で裁かれる運命にあるだろう」
セヴェルスは月明かりの中で自らの手を見つめた。「影の中で、我々は神の意志を形作る者となる。クレスウェル家の滅亡は、必然なのだ」