待ちわびた報せ

カストゥムの街はいつもの喧騒に包まれていたが、エリオット・ルカナムの心は重く曇っていた。リディア・クレスウェルが行方不明になって以来、彼は自分の無力さを責め続けていた。エリーナの気持ちも痛いほど分かっていたが、何もできずに時が過ぎるのを待つしかなかった。


その日、エリオットは街外れの図書館で魔導書を広げていたが、心ここにあらずだった。リディアの無事を祈りつつも、エリーナがどれほど苦しんでいるかを考えれば考えるほど、焦燥感が募っていく。

突然、アレナ・フェリダの念話が頭の中に響いた。

「エリオット、カリス、聞こえるかしら?」

その声に、エリオットは驚いて顔を上げた。何かが起こったのだと直感し、すぐに心で応じる。

「アレナ、どうしたんだ?」

アレナの次の言葉は、エリオットの心に大きな衝撃を与えた。

「リディアが救出されたわ。アレクサンドルとエリーナが一緒よ。リディアは無事だけど、しばらくは回復が必要だわ」

その瞬間、エリオットの胸の中に喜びと安堵が湧き上がった。リディアが無事であるという事実、そしてアレクサンドルとエリーナが彼女のそばにいるという安心感。それまでの心配が一気に軽くなったように感じた。

「リディアが……無事なんだな?」

彼は念話の中で声を震わせながら問いかけた。アレナは落ち着いた声で応じた。

「ええ、彼女は無事よ。今は回復に専念しているけど、アレクサンドルとエリーナがそばにいるから安心して」

エリオットは深く息をつき、肩の力が抜けるのを感じた。長い間、彼を苦しめていた不安が少しずつ解けていった。リディアが無事で、彼女がエリーナとアレクサンドルと共にいるということが、彼にとって何よりも安心できる知らせだった。


その時、カリス・グレイフォークが図書館に入ってきた。彼も同じく、アレナからの念話を受けていた。

「エリオット、リディアが無事だって!アレックとエリーナも一緒らしい!」

カリスは興奮した様子で声をかけ、エリオットも笑みを浮かべて頷いた。

「ああ、聞いたよ。リディアが無事で、本当に良かった」

カリスはエリオットの反応に少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔で彼の肩を叩いた。

「俺たちも早くリディアに会いたいな。エリーナもやっと一息つけただろうな」

エリオットはその言葉に頷きながら、エリーナのことを思い浮かべた。彼女がどれほど姉を心配していたかを知っているからこそ、エリーナの心も今は少し安らいでいるだろうと願った。

「エリーナも、きっとほっとしているだろう。リディアが無事で何よりだ」


エリオットはリディアの救出に心からの喜びを感じつつ、彼女の身体が回復するために十分な時間が必要であることも理解していた。そして、エリーナがリディアのそばで安堵しているだろうということが、彼にとっても大きな安心だった。これから、彼女たちが回復し再び仲間として共に戦う日を待ち望んでいた。