エリーナはリュドミラと共に、カストゥムの一角に位置するレティシア・ノルヴィスの屋敷を訪ねた。訪問の知らせを受けていたレティシアは、二人を温かく迎え入れてくれたが、エリーナもリュドミラもまだ親しい間柄というには程遠く、互いに礼儀正しいやりとりが続いていた。
セシルからの手紙を渡し、エリーナが言葉を選びながら事情を説明し始めた。リュドミラも補足するように話を続け、これまでの努力と今後の協力がどれほど重要かを伝えた。レティシアは古代文明や遺跡の知識を持ち、その豊富な情報と人脈は大きな助けになるに違いない。
説明を終えた後、レティシアは静かにうなずいた。「あなたたちの思いがよく分かりました。私でよければ力を貸します」と優しい笑顔で言い、協力を約束してくれた。エリーナは胸をなでおろし、リュドミラも微笑んで頷いた。
帰り道、エリーナとリュドミラは二人きりになり、並んで歩いていた。ふと、リュドミラがエリーナをちらりと見て、ややいたずらっぽい表情を浮かべた。「エリーナ、あなたがエリオットに恋していること、私にはお見通しよ」
突然の言葉に、エリーナは驚き、顔を赤らめてリュドミラを見つめた。「どうしてそんなことを……?」
リュドミラはくすりと笑い、「私を誰だと思っているの?」と返す。彼女の特異な能力、サイコメトリーで、人の感情や情報を読み取ることはお手の物だったのだ。「それに、人の気持ちはとても繊細だけど、私にははっきりと見えてしまうのよ」
エリーナは照れ隠しに視線をそらしたが、リュドミラは優しく続けた。「エリオット、あの人はかなり鈍いわね。だけど、頑張ってね」と励ましの言葉をかけた。エリーナは心の奥で少しの勇気を感じながら、リュドミラの言葉に静かに微笑んで頷いた。