揺るぎない誓い: 脅威を超えて

結婚式当日の朝、灰燼の連盟の本拠地には静かな緊張感が漂っていた。晴れ渡る青空の下、式場となる庭園は華やかな装飾に彩られ、来賓たちが次々と到着していた。しかし、その美しい光景の裏側では、誰もが影の脅威を意識していた。

セリーヌ・アルクナスは控え室で最後の準備を進めながらも、落ち着いた表情を崩さなかった。彼女の隣では、アリアナ・フェリスがドレスの裾を整えつつ、緊張を隠すように軽い冗談を口にした。「セリーヌ、あまり真面目な顔をしていると、新しい人生の始まりというよりも戦場にいるように見えるわよ」

セリーヌはそれに微笑みで応じたが、その目には揺るぎない決意が宿っていた。「どちらも変わらないわ、アリアナ。この結婚は、私個人の未来だけではなく、私たち全員の未来を象徴するものだから」

その時、控え室の扉が勢いよくノックされ、ヴァレンティナ・コルヴィスが駆け込んできた。「セリーヌ様、敵が動き始めました!式場の北門付近に不審な影が見えたとの報告があります」

庭園の端では、アレクサンドルが地図を広げて指示を出していた。「北門の警備を強化しつつ、敵の意図を探れ。可能ならば捕縛し、式を混乱させないように」彼の声は落ち着いていたが、その目は鋭く光っていた。

レオニード・バルカンはすでに指揮を執り、騎士たちを適切な配置につけていた。「襲撃者が式を混乱させるつもりなら、その一歩も踏み込ませない。我々の任務は、式が滞りなく進むよう守り抜くことだ」彼の声は部下たちに勇気を与えた。

襲撃は式の直前に始まった。数人の妨害者が北門を突破しようと試みたが、すでに配置されていた騎士たちによって即座に迎撃された。その中の一人が捕縛され、残りは混乱の中で逃走を図った。

セリーヌはその報告を受けると、毅然とした態度で言った。「捕縛した者から情報を引き出して。逃げた者たちは追わなくていい。式を中断する理由にはならないわ」

その言葉に、控え室にいたアリアナや他のメンバーたちも一瞬驚いたが、すぐにその意味を理解した。「セリーヌ様、さすがです」ヴァレンティナが静かに称賛した。

庭園に設けられた祭壇の前に、セリーヌがレオニードと並んで立ったとき、彼女は先ほどまでの緊張を一切感じさせない穏やかな微笑みを浮かべていた。周囲に集まった貴族や来賓たちは、彼女の堂々とした立ち振る舞いに深い敬意を抱いていた。

レオニードが小声で囁いた。「さっきの状況でも動揺を見せない君に、改めて驚かされるよ」

「あなたがいたから、私は冷静でいられたの」セリーヌは小さく微笑み返した。「私たちはこれから、どんな困難も共に乗り越えていけると信じている」

式が終わり、来賓たちが次々と祝福の言葉を送る中、アレクサンドルがセリーヌに近づいた。「式を成功させたことの意味は大きい。だが、今回の襲撃は計画が順調に進んでいる証拠でもある。これからも警戒を緩めるべきではない」

「その通りね」セリーヌは真剣な表情で答えた。「この結婚が一つの始まりであることを忘れないわ」

レオニードもその会話に加わり、力強く頷いた。「私たちの誓いが、この国に新しい希望をもたらす。そのために、何があっても前に進もう」