黎明の翼を中心とする仲間に加わり、アレクサンドルと共に行動する日々を過ごすマリアナ。彼女は、自分がこの集団の中に自然と組み込まれてしまったことに戸惑いを感じながらも、アレクサンドルのそばにいられることに密かに喜びを感じていた。
「私の居場所がここでいいのかしら……」と心で問いつつも、アレクサンドルへの一途な思いが彼女の心を支えていた。
カストゥムでエリオットたちと再会して数日後、セシルとエミリアはレティシアを伴って、アレクサンドルたちとアレナ・フェリダの事務所で合流することになった。アレクサンドルと恋仲であるレティシアにとっても、そしてその事実を知るマリアナにとっても、この対面は避けられないものだった。
レティシアは、アレクサンドルへの変わらぬ想いを抱きつつも、彼のそばにいるマリアナの様子に気づかないわけにはいかなかった。二人の間に漂う張り詰めた空気に、アレクサンドルもどう言葉をかけるべきかを迷っていた。
場の気まずさを感じ取ったレオンが、和やかな話題を振りつつも、マリアナとレティシアが対話の機会を持てるようにと促した。少しの沈黙の後、ついにマリアナが声を上げた。
「レティシアさん……私は、あなたのようにアレックを深く理解しているわけではないかもしれません。でも、私は彼をずっと支えたいんです。彼のそばで……どんな形でも一緒にいたいと思っています」
その言葉を聞いたレティシアは、自身がアレクサンドルに抱いてきた想いと、目の前にいる女性の真摯な願いとの狭間で、微かに胸が揺れ動いた。
「マリアナさん、あなたがどれだけ彼のことを真剣に想っているか、少しわかってきた気がするわ……」と静かに話し始めたレティシア。しかし、心のどこかで自分が彼と共有してきた日々が過去のものになりつつあることも感じていた。
アレクサンドルは、二人の言葉を聞きながら、今までのレティシアとの関係に対する思いと、マリアナの一途な視線の両方を静かに受け止めていた。二人の前で何を言うべきかを模索しつつも、どちらの心にも敬意を抱き、誠実な選択をしなければならないことを強く感じていた。
レティシアは一度深く息をつき、アレクサンドルへの複雑な思いを胸に秘めながらも、彼とマリアナが共に歩む姿を想像していた。心の中で、今ここでの選択が自分の未来にも影響を与えることを理解しつつ、静かに身を引く決意を固めた。
「マリアナさん、あなたの一途な思いには、私がどうしても及ばない気がするわ。アレックには、きっとあなたのような存在が必要だと感じているの」
その言葉にマリアナは驚きつつも、彼女の内に秘めた想いの強さに圧倒されながら、深くお辞儀をし、感謝の気持ちを伝えた。
アレクサンドルもまた、二人のやり取りを通じて、自身の心の整理をつけ、新たな選択を胸に秘める決意を固めたのだった。