エリディアムの朝は冷たい霧に包まれ、空気に鋭さを感じさせた。クレスウェル邸の前にはエリオット・ルカナムとエリーナ・クレスウェルが支度を整え、カリス・グレイフォークが少し離れた場所に立っていた。
「カリス、準備はいい?」エリオットが穏やかな声で問いかけた。
カリスは一瞬躊躇し、視線をエリオットとエリーナに移した。二人の間には何とも言えない親密さが漂っており、カリスは無意識に顔を逸らした。「いや、やっぱり俺が行くのはどうだろうな。二人にとって邪魔になるかもしれない」
エリーナはその言葉に軽く笑みを浮かべ、「カリス、あなたが一緒にいてくれるのは心強いわ。私たち二人だけでは不安が残るもの」と言った。エリオットも「そうだ、カリス。君がいてくれるからこそ心強い。遠慮することはない」と力強く言葉を添えた。
カリスは一瞬黙り込んだが、やがて小さく笑って肩をすくめた。「わかった、ついていくよ。ただし、二人きりになりたくなったときは遠慮なく言ってくれよ。俺は後ろを向いて空でも見てるさ」
エリオットとエリーナはその冗談に顔を見合わせ、思わず笑ってしまった。少し緊張していた空気が和らぎ、エリディアムの冷たい空気の中にも温かな雰囲気が広がった。
カリスは荷物を背負い、エリオットとエリーナに向かって軽く手を上げた。「じゃあ、行こうか。カストゥムへの道は長い。無駄な時間を過ごすわけにはいかないだろう?」
エリオットは頷き、エリーナに視線を向けた。「そうだね。出発しよう、みんなで」
三人はそれぞれの決意を胸に、クレスウェル邸を後にした。エリディアムの丘陵が彼らを見送るかのように静かに佇んでいた。