新たな皇帝の誕生

荘厳な鐘の音が都中に響き渡ると、広場に集まった人々のざわめきが一瞬で消えた。空は澄みわたり、日の光が玉座の間へと降り注ぐ。ここに集ったのは各地の貴族、騎士、商人、そして民衆たち。新たな時代の到来を象徴する瞬間を目撃しようと、息を潜めてそのときを待っていた。

玉座の間の正面に設えられた壇上では、セリーヌ・アルクナスがゆっくりと歩みを進めていた。彼女は帝国の伝統を象徴する青と金の装束に身を包み、その姿は威厳と静かな力強さを兼ね備えていた。だが、その顔にはどこか穏やかさも漂っていた。

壇の下で見守るアレクサンドルは、周囲の動きを鋭い目で確認していた。彼はすべてが順調であることを確認し、隣に立つレオニードに小さく頷いた。「これが終われば、我々の次の課題が始まる」そう呟いた彼に、レオニードも小さく答える。「彼女ならやり遂げるだろう」


セリーヌが玉座の前に立つと、広間の静寂が重みを増した。彼女の目は壇上から広場までのすべてを見渡し、まるで一人ひとりの心に語りかけるようだった。そして、彼女はゆっくりと口を開いた。

「私はここに誓います」その声は静かでありながら、玉座の間全体に響き渡るようだった。「この地に平和と繁栄をもたらし、人々が未来を信じられる国を築くことを」

彼女は言葉を一つひとつ慎重に選びながら続けた。「エリディアム帝国は、すべての人々の力を結集して成り立つものです。各地の自治を尊重しつつ、私たちが一つの国として団結することで、さらなる発展を目指します」

その言葉に、壇の周囲で見守っていた貴族たちが微かに頷いた。彼らの多くは過去の戦いや混乱を経験しており、帝国が一つにまとまる意義を理解していた。一方、民衆の間ではささやかな拍手が湧き起こり、次第に広がっていった。


式典のクライマックスが近づく中、セリーヌは壇上の一角に用意された旗を手に取った。それは、帝国の新しい旗、月と星が輝く象徴だった。彼女はその旗を高々と掲げた。「この旗の下で、私たちは新たな時代を切り開きます」

広場に集まったすべての人々が一斉に声を上げた。「皇帝陛下万歳!」その声は次第に一体感を持ち、都全体に響き渡った。

壇の上でその光景を見つめながら、アレクサンドルは静かに息をついた。「これで第一歩だ」彼は自分に言い聞かせるように呟いた。

セリーヌが玉座に座ると、広場から新たな歓声が巻き起こった。その中には、これまでの戦いや犠牲を乗り越え、未来への希望を持ち始めた人々の思いが込められていた。