旅路の告白と絆

クレスウェル邸を離れ、カストゥムへの帰路を進むアレクサンドルレオン、そしてエリーナの三人は、日が傾きかけた山道で一人旅をする若い女性の姿を見つけた。

「誰だろう?」と、エリーナが不安そうに呟いた。

その人影がこちらに気づき、振り向いた瞬間、アレクサンドルは目を見張った。「……マリアナ?」

彼女は少し微笑みながら、足を止めて彼らを待っていた。アレクサンドルは馬を降り、マリアナに近づく。

「アレクサンドル、あなたに会いたくてここまで来たの」と、マリアナは静かな声で言い、彼を見上げた。その瞳には強い意志と、どこか切なさが宿っていた。


二人の間に流れる雰囲気に気づいたレオンは、無言でエリーナと顔を見合わせ、少し距離を取る。「少し時間を取るよ、アレクサンドル」とだけ伝え、二人の間に流れる空気を壊さないように気を遣った。


アレクサンドルはマリアナに目を戻し、彼女がこの道を一人で旅してきたことに驚きながらも、彼女の決意を感じ取っていた。「マリアナ、一人でここまで来るなんて、何か伝えたいことがあるんだろう?」

マリアナは静かに頷き、目を逸らすことなく彼を見つめた。「そう、伝えなければならないってずっと思っていたの。私の思いを……」

彼女は一瞬視線を落とし、心を決めるように深呼吸をしてから言葉を続けた。「アレクサンドル、私にとって、あなたはただの仲間ではなく、支えであり、ずっと傍にいたい人なの。私には、あなたのために戦いたいという気持ちがあるの」

その告白にアレクサンドルは一瞬言葉を失ったが、彼女の真剣な眼差しに触れ、自らの心に生まれた静かな感情を再確認した。「マリアナ……君の思いを聞けて嬉しいよ」と優しい声で返した。「私もまた、君を大切な存在として見ている。だからこそ、私には進むべき道があるんだ」

マリアナの顔には淡い笑みが浮かんだが、その笑みにはどこか覚悟のようなものがにじんでいた。「アレクサンドル、あなたが望む未来のために、私も私の力であなたを支えたい。例えそれが、私たちの距離を広げることになったとしても」


レオンは後ろからその様子を見守り、隣に立つエリーナにそっと囁いた。「あの二人がこうして出会うことは、きっと運命なんだろう」

エリーナは少し目を潤ませながら、レオンの言葉に頷いた。「アレックのことを、こんなに真剣に思ってくれているなんて……マリアナさん、本当に強い方ですね」


アレクサンドルは二人の気配を感じながらも、もう一度マリアナに向き合った。リディアが縁談という形で家を守ろうとする姿に感銘を受けたように、マリアナが隣で支えようとしてくれることに、大きな感謝と尊敬を抱いていた。

「カストゥムまでは少し距離があるが、君とともにこの旅を進めたい」とアレクサンドルが言うと、マリアナは小さく頷き、肩を並べて歩き始めた。

こうして、アレクサンドルとマリアナはカストゥムへの旅路を共にし、その道中で互いの想いを分かち合い、絆を深めていくのであった。