星空の下の淡い想い

リディアが消息を絶ち、「黎明の翼」の一員としてエリーナが奮闘していたころ、彼女は日々の訓練や冒険に追われながらも、一瞬だけ心の揺らぎを覚える瞬間があった。それは、同じ隊の一員であるエリオット・ルカナムとの交流を通じて芽生えた微かな感情だった。

エリオットは魔法使いとして優れた知識を持ち、常に冷静な態度で任務に臨んでいた。しかし、彼はリディアが消えた後、エリーナの心の痛みを理解し、彼女に対して優しい言葉をかけていた。エリーナが剣術に没頭し、仲間に貢献しようとする姿を見守る中で、エリオットは彼女に魔法の基礎や戦術を教えることもあった。その際、エリーナはエリオットの知的で落ち着いた態度に安心感を覚えるようになった。

ある日、二人は山岳地帯の任務の帰り道、夜空の下で焚き火を囲んでいた。エリーナは訓練の疲れを感じつつも、エリオットに戦闘での戦術について助言を求めた。エリオットはいつもの冷静な口調で応じながらも、エリーナの情熱とひたむきな努力に感心していた。

その時、エリーナはふと自分の心に浮かぶ感情に気づいた。エリオットの隣にいると、彼の言葉や存在に何か特別なものを感じていたのだ。しかし、彼女は自分が感じているものが何なのかはっきりと分からず、それが「恋」だと気づくにはまだ時間がかかった。エリーナにとって、リディアの不在が何よりも大きな心の支えとなっており、彼女の使命感がその感情を押し留めていた。

その夜、エリーナはエリオットに感謝の言葉を伝えようとしたが、彼の落ち着いた顔を見た瞬間、胸が高鳴り、何も言えなくなってしまった。エリオットは気づかないまま、夜空に浮かぶ星々を見上げ、静かに微笑んでいた。その姿が、エリーナにとって初めて心を揺さぶられる瞬間だった。

しかし、エリーナは自分が感じている感情を抑え込み、その後も剣士としての道を進むことに専念した。彼女の初恋は、エリオットへの淡い想いとして心の奥に残り、リディアを取り戻すまでの間、静かに彼女の中で育まれていった。