ガイウス・クレスウェルはある夜、エリディアムの貴族たちが集う晩餐会に招待されていた。その会場には、エリディウス教の高位聖職者として知られるセリオ・アルバインの姿があった。彼は多くの貴族に囲まれながらも、ガイウスに気づくと人混みを抜けて近づいてきた。
「ガイウス様、久しぶりにお会いできて光栄です」セリオは微笑みながら、ガイウスに丁寧に挨拶をした。「今日は、あなたにとって興味深いお話があります。月の光の導きに従うことで、さらなる繁栄と力を手に入れることができるのです」
ガイウスはその言葉に疑念を抱きつつも、顔には微笑みを浮かべ、「それは興味深いお話ですね、セリオ殿。ですが、決断するには少し時間が必要です」と、曖昧に返答した。
晩餐会が終わった後、ガイウスはエリディアムの情報屋アニス・グレイバーに接触することにした。アニスとは以前から取引があり、信頼できる人物だった。ガイウスはセリオから受けた勧誘についてアニスに相談し、月の信者たちについて調査するよう依頼した。
アニスは依頼を引き受け、数日間エリディアムの裏社会を駆け巡り、月の信者たちの動向を探った。その結果、彼はセリオが秘密裏に信者たちを集め、儀式を行っていることを突き止める。「ガイウス様、彼らは単なる宗教的集まりではありません。今夜、郊外の遺跡で秘密の儀式が行われるとの情報があります」
ガイウスはアニスからの情報をもとに、数名の信頼できる家臣と共にその遺跡へ向かった。遺跡の周囲は薄暗く、月光だけが道を照らしていた。彼らは息を潜め、儀式の様子を窺った。
中央にはセリオ・アルバインが立っており、信者たちに囲まれていた。彼は月光を浴びながら、低い声で祈りを捧げている。その中心には、縛られた若い男性が祭壇に横たわっていた。
「これは…生贄か?」ガイウスは目を細め、事態の深刻さを理解した。セリオが短剣を掲げ、月に向かって唱えた。「月の恩寵を我らに!その命を捧げ、新たなる力を!」
その瞬間、月光が異様に輝き、男性の体が光に包まれたかと思うと、彼の姿が消え、代わりに不気味な影が現れた。ガイウスは恐怖を覚えつつも、その場にとどまり、儀式が終わるまで観察を続けた。
屋敷に戻ったガイウスは、すぐに家族と家臣たちに警戒を強めるよう命じた。「セリオ・アルバインは、月の信者たちの儀式で人の命を捧げている。彼らはただの信仰団体ではなく、危険な勢力だ」彼は事態の深刻さを理解し、家族を守るため、そしてクレスウェル家の安全を確保するため、さらなる調査と対策を講じる決意を固めた。
ガイウスは、月の信者たちの真の目的と彼らの勢力の拡大を防ぐために、同盟者や協力者に警告しようと動き出した。しかし、その行動が後に彼の立場をさらに危うくするとは、この時はまだ知らなかった。