未来を紡ぐ二人の約束

エリディアムの夕陽が低く差し込み、二人だけが残る部屋を黄金色に染めていた。セリーヌ・アルクナスは、窓辺に立つレオニード・バルカンにそっと声をかけた。彼は遠くの空を見つめながら、静かに次の言葉を待っているようだった。

「レオニード、少し話をしてもいいかしら?」セリーヌはその背中を見つめながら問いかけた。

レオニードは振り返り、穏やかな表情で応じた。「もちろんだ、セリーヌ」

セリーヌは席に戻りながら話し始めた。「貴方が私との結婚を受け入れてくれたこと、本当に感謝しています。でも、ひとつ確認したいことがあるの」

「確認したいこと?」レオニードは少し首を傾げたが、真剣な顔つきで座り直した。

セリーヌは一瞬、言葉を選ぶように目を伏せたが、すぐに彼の目をまっすぐに見つめた。「私が皇帝になるということは、公の場では貴方は私の下の地位になるということ。それがどれだけ居心地の悪いことか、貴方は想像できているのかしら?」

レオニードは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに苦笑いを浮かべた。「セリーヌ、今でも私は灰燼の連盟で貴方の配下だ。それに、貴方が私の上に立つことは不自然なことではない」

その答えに、セリーヌはほっとしたように微笑んだ。「そう言ってくれると助かるわ。でも、もう一つ、気になっていることがあるの」

「なんだ?」

セリーヌは窓の外を見つめながら、自嘲するように笑った。「私はもう32歳よ。決して若くはない。そんな私で、本当に良いの?」

レオニードはその言葉に一瞬黙り込んだが、次の瞬間には心からの笑みを浮かべた。「それを言うなら、私は40だ。若くないのはお互い様だろう?」

その軽やかな答えに、セリーヌは一瞬目を見開いたが、すぐに吹き出しそうになるのを堪えた。「確かに、そうね」

二人はしばらくの間、笑いをこらえながらお互いを見つめ合っていた。やがて、セリーヌは少し声を落として言った。「でも、私たちが世継ぎをもうけるなら、急がないといけないわね」

レオニードも真剣な顔で頷いた。「その点では間違いない。我々が未来を築くためには、次の世代に受け継がなければならないものがある」

「それなら、明日からすぐに取り掛かりましょう」セリーヌの口調には冗談めいた軽やかさが混じっていたが、その瞳には決意が宿っていた。

「その言葉、忘れるなよ」レオニードも少し微笑みながら応じた。

部屋に響いた二人の笑い声は、これから共に歩む道を照らすように温かく響き渡った。その瞬間、彼らの絆はより一層強固なものとなり、新たな未来が始まろうとしていた。