未知の地図作成依頼


カストゥムの夕暮れ、セシル・マーベリックレティシア・ノルヴィスに呼ばれ、指定されたカフェへと向かっていた。彼は普段から地図作成の依頼を受けているが、レティシアからの依頼はいつも興味深く、ただならぬものが多い。どんな話が待っているのか、少し期待が膨らんでいた。

カフェの窓際に腰掛けるレティシアが見え、セシルは軽く挨拶して席に着いた。彼女は柔らかな笑顔で、彼の来訪を歓迎するように頷いた。


セシルが席に着くのを見て、レティシアは嬉しそうに話を始めた。「セシル、今回は少し無茶なお願いかもしれないけれど、きっと面白い依頼になるわ」と、どこかいたずらっぽく微笑みながら切り出した。

レティシアの持ちかけた依頼は、最近発見されたエリディアム周辺の未踏地域についてだった。アウレリアの冒険者や魔道学者の間で噂になっているその地域は、未知の遺跡や魔法に関わる何かが眠っている可能性があり、調査のためには正確な地図が不可欠だ。

「地理が不確かで、正確な地図もまだない場所なの。それで、あなたの力が必要だと思って」

彼女の言葉には、学者としての興味と探究心が詰まっていた。彼女はセシルを信頼しており、彼の観察力と地図作成技術がこの調査の鍵になると確信していた。


セシルは話を聞きながら、冒険心をくすぐられるのを感じていた。未知の地を地図に起こすことは、彼にとって特別な挑戦だ。しかし、依頼の場所がエリディアム周辺だと聞くと、少し別の思いが浮かんだ。

「エリディアム周辺か……。実は、あの辺りには黎明の翼の仲間であるリディアが関わっている可能性もあるんだ。エミリアも、あの地域については気にかけていたから」

セシルは恋人であるエミリアの心配を思い出し、表情を引き締めた。エミリアが気にかけているリディアの行方を追うためにも、この依頼が新たな手がかりに繋がるかもしれないと感じていた。


レティシアはセシルの話を聞いて、思わぬ方向に依頼が広がったことを面白く感じた。「なるほど、リディアさんの話も関わってくるかもしれないのね。エミリアもその調査に同行するのかしら?」と、好奇心を込めて尋ねた。

セシルは小さく頷きながら、「エミリアにも話して、一緒に調査に向かうつもりだ。地図作成の面でも遺跡調査の面でも、僕たちの力が役に立つかもしれない」と答えた。

レティシアは彼の真剣な表情を見つめ、セシルとエミリアがこの旅に何かしらの確信を見出しているように感じた。


セシルはレティシアの依頼を引き受けることを決め、頭の中で計画を立て始めていた。未知の地域の地図を描くという作業に、いつも以上の責任が加わる。エミリアが心を痛めているリディアの行方に少しでも光を当てられるかもしれないという期待が、彼の中で高まっていた。

「分かった。僕ができる限りの地図を作成して、エミリアにも報告するよ。レティシア、ありがとう。君のおかげで、少しだけ道が見えた気がする」

レティシアは微笑んで頷いた。「気をつけて、そして成功を祈っているわ」

こうして、レティシアからの地図作成依頼がきっかけとなり、セシルはエミリアとともにエリディアム周辺の調査へと向かう決意を固めた。この調査が、思いもよらぬ方向でリディアの捜索に繋がっていくことを、彼らはまだ知らなかった。