カストゥムでレティシア・ノルヴィスと何度か情報交換を続ける中で、セシルは焦りを感じていた。ルーン・オーブや月の信者に関する情報は、少しずつは増えているものの、核心に迫る手がかりは得られず、日が経つごとに苛立ちは募るばかりだった。
「レティシアもいろいろと手を尽くしてくれているのに、思ったようには進まないな」とセシルは自分に言い聞かせるように呟き、資料を片付ける手に力を込めた。
エミリアもその苛立ちを感じており、「結婚の準備もあるし、時間が思った以上に限られているわ」と、ふとため息をついた。
エミリアはセシルと視線を交わし、「焦る気持ちはわかるけれど、無理をしても良い結果にはつながらないかもしれない」と冷静に語りかけた。彼女は、自分たちの関心がルーン・オーブや月の信者にあることを理解しているものの、現実的に結婚の準備も大切であると感じていた。
「アレクサンドルたちが戻ったら、彼らと一緒にもう一度今後の方針を考え直せばいいわ」とエミリアが提案すると、セシルは深く頷いた。「そうだね、彼らが戻ってくれば新しい展望が開けるかもしれない」
セシルとエミリアは、結婚の準備とルーン・オーブの調査の両方を進めなければならないという現実を受け入れ、今は焦らず次の計画を練ることに集中することにした。アレクサンドルたちがカストゥムに戻ったときに新しい情報がもたらされることを期待し、二人は静かに決意を新たにした。