見えざる鎖

レオヴェリック・オスベリックは、王宮の広間で報告を聞きながら、冷静な目で国の未来を見据えていた。エリディウムに関する最新の報告書には、クレスウェル家の同盟者たちが依然として影響力を保っていることが記されていたが、それが変わりつつある兆候もあった。

彼の隣には、オスベリック家の信頼する将軍であり、軍事顧問のハルヴィック・ストラウドが立っていた。「陛下、クレスウェル家の同盟者たちは未だに彼らを信じていますが、経済的な圧力と軍事的な脅威を見せることで、徐々に我々の方に傾いています」

レオヴェリックは、ハルヴィックの言葉に頷きながらも、視線を遠くに向けた。「分かっている。しかし、彼らが自らの意思でクレスウェル家を見限るまで、もう少し時間が必要だ。圧力だけではなく、希望も与えるのだ。我々に従えば、彼らの未来は安泰だとな」

ハルヴィックは少し微笑み、「その通りです。特に経済的支援と軍事的な保護を提示すれば、小貴族たちはすぐに反応を見せるでしょう」と応じた。

その後、レオヴェリックは自ら小貴族たちに対して使者を送ることに決めた。エリディウムの同盟者たちは、クレスウェル家がいずれ失脚するという情報に揺れていたが、彼らはまだ完全にはオスベリック家に従う気配を見せていなかった。そこで、レオヴェリックはさらなる圧力を加えると同時に、彼らに利益を約束する計画を立てた。

その夜、レオヴェリックは広間で小貴族たちとの秘密会談を開いた。彼は高貴で落ち着いた態度で迎え入れ、一人ひとりに視線を送りながら、話し始めた。「エリディウムの未来は、あなた方の選択にかかっています。クレスウェル家はもはや我々の支配を脅かす存在です。しかし、あなた方が我々と共に歩むならば、経済的な安定と軍事的な支援を約束しましょう」

小貴族たちは顔を見合わせ、迷いの表情が浮かんだ。彼らは、長年クレスウェル家と良好な関係を築いてきたが、オスベリック家の圧倒的な軍事力と経済力を前に、抵抗することの危険性を感じ始めていた。

その中の一人、アレクシス・ファルディアは、重々しい表情でレオヴェリックに問いかけた。「陛下、もし我々がクレスウェル家と距離を置けば、その後の保障はあるのでしょうか?彼らとの絆を断つことは、我々にとっても大きな賭けです」

レオヴェリックはアレクシスの目をじっと見つめ、確信に満ちた声で答えた。「ファルディア卿、あなた方には我々がついている。我がヴァルレギア王国の保護のもとで、エリディウムの新たな時代を共に築こうではないか」

アレクシスはしばらく考え込んだが、やがて他の小貴族たちと同様に、うなずき始めた。その表情にはまだ不安が残っていたが、オスベリック家の力を前に、彼らは選択肢を失いつつあった。

レオヴェリックは、その反応を満足げに見つめ、内心でほくそ笑んだ。「クレスウェル家はもう終わりだ。同盟者たちが自ら裏切るように、私は鎖を操るだけでいい」

彼が密かに笑みを浮かべたその時、ヴァルレギアの支配はさらに強固なものとなり、クレスウェル家はまた一歩孤立へと追いやられたのだった。