通信網構築への第一歩

アレクサンドルは、緊急時や広範囲に情報を伝えるための手段が今後の活動においてどれほど重要か、ひしひしと感じていた。彼は情報ネットワークの基盤をしっかりと作ることが急務だと考え、仲間たちを集めて打合せを行った。

アレクサンドルが提案を持ち出すと、広間に集まった仲間たちは真剣な面持ちで耳を傾けた。彼はまず、現状の問題点を説明した。

「現時点では、旅人に手紙を預けたり、伝書鳩を使うといった方法に頼らざるを得ない。緊急の時はアレナの念話を使うしかないが、それでは彼女の負担が大きすぎるし、依存しすぎるのは危険だ。もしアレナが不在になったら、僕たちの通信は途端に破綻する」

その言葉に、アレナは苦笑しながら肩をすくめた。「負担を減らしてくれるなら歓迎よ。でも、他に何かいい案があるのかしら?」

カリスが手を上げ、思案するように口を開いた。「俺の盗賊時代の仲間に、いくつか使える情報筋がある。短距離ならメッセンジャーとして活用できるが、問題は広範囲だ。やはり定期的な通信手段が必要だな」

レオンも考え込むように顎に手を当てて言った。「軍では、狼煙や信号旗を使って情報を伝えていたが、広い領域でこれを使うには中継点を多く設ける必要がある。それと、暗号化する工夫も要る」

マリアナが真剣な眼差しで頷く。「そうね。私も軍事用の通信方法に詳しいわ。ただし、私たちの活動は軍のような組織的な支援があるわけじゃない。少人数でも迅速に動ける手段が必要ね」

アレクサンドルはメモを取りながら、皆の意見に耳を傾けた。しかし、議論が進むうちに、彼は現実の厳しさを実感していた。

「すぐに結論が出るわけじゃないし、たとえ結論が出たとしても、すぐに準備が整うわけでもない」と彼はため息交じりに言った。「だから、短期で実現できることと、中長期的な計画に分けて考える必要がある」

その言葉に、カリスが頷きながら提案を続けた。「短期的には、超能力者や魔術師をスカウトすることでしのぐしかないかもしれない。急ごしらえの策にはなるが、今の状況を乗り越えるには効果的だ」

リュドミラが考え込みながら口を開いた。「念話は使えないけれど、透視能力やサイコメトリーなら使えるわ。手紙の情報の真偽や差出人の状況を知ることができるから、情報の信頼性を担保するためには役に立つと思う」

アレクサンドルはその言葉に目を輝かせた。「それは大きな力だよ、リューダ。情報の裏付けを取る上で君の能力はとても重要だ。ありがとう」

アレクサンドルは最後に、今後の方針をまとめた。「情報インフラについては各自持ち帰って検討してほしい。後日、改めて再検討しよう。もし超能力者や魔術師で協力してくれそうな人材がいれば、紹介してくれると助かる」

仲間たちはうなずき、それぞれの課題を胸に、準備を進めていくことを決意した。