アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチは常に孤高のリーダーとして、仲間を守り、戦い続けてきた。彼は冷静で強い意志を持つが、その心の奥底には、誰にも打ち明けられない感情が隠されていた。それは、ある日の出会いをきっかけに芽生えたものだった。
その相手は、新たにカストゥムに移住してきた旅の学者、レティシア・ノルヴィス。彼女は高名な魔道学者として知られており、各地を巡りながら失われた古代文明の研究を行っていた。アレクサンドルとレティシアが出会ったのは、古代遺跡の調査中に偶然にも遭遇したときだった。
夕暮れの遺跡の中、アレクサンドルは黎明の翼の仲間たちと共に調査を進めていた。そこで、彼は一人の女性を見つけた。彼女は長い黒髪を後ろに束ね、シンプルな旅の装いをしていたが、その知的な雰囲気と鋭い眼差しが目を引いた。
「あなたが、アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチですか?」
彼女は冷静に、だが敬意を込めて問いかけた。アレクサンドルは少し驚いたが、落ち着いた声で答えた。
「そうだ。君は誰だ?」
「レティシア・ノルヴィス。学者としてこの遺跡を調査している者です。ここには、私が長年探していた古代の書物があると聞いて……」
レティシアの話す内容は、アレクサンドルにとっても興味深いものだった。彼は彼女がただの学者ではなく、この世界の秘密に深く関与している人物であることに気づき始めた。
それ以来、アレクサンドルとレティシアは互いに協力し合うようになった。彼女の知識と冷静な判断は、アレクサンドルにとって大きな助けとなり、彼は次第に彼女の存在を特別に感じ始めていた。
ある夜、二人は遺跡の中で焚火を囲みながら、静かな時間を過ごしていた。周囲には誰もいなく、ただ夜風が彼らの間を吹き抜けていた。
「アレクサンドル……」
レティシアは静かに彼の名を呼んだ。その声には、普段の冷静さとは違う温かみがあった。
「何だ?」
彼は少し緊張しながらも、彼女の声に応えた。レティシアは一瞬、言葉を飲み込んだが、やがて心の奥底に隠していた感情を静かに口にした。
「あなたといると、不思議と安心するの。これまで、私は自分の知識と使命だけに生きてきた。でも、あなたと出会ってから……何かが変わった気がする」
アレクサンドルはその言葉に一瞬戸惑ったが、彼女の瞳に込められた真摯な感情を見て、心が揺れ動いた。彼もまた、彼女の存在が自分にとって特別なものであることを認めざるを得なかった。
「僕もだ。君がそばにいると、なぜか落ち着くんだ」
その瞬間、二人の間に静かな共感が生まれた。言葉にしなくても分かる何かが、彼らの間に存在していた。