選択の時

曇天の下、黎明の翼のメンバーは山道を登っていた。険しい岩肌に覆われた道は、彼らを静かに先へと導いていたが、どこか重苦しい雰囲気が漂っていた。彼らの前には重要な決断が待ち受けていることを皆、無意識に感じ取っていた。

アレクサンドルが先頭に立ち、険しい山道を睨むように進んでいた。彼の顔には不安と決意が交錯している。ふと、エリーナが彼の隣に並んだ。

「アレック、どうしたの?」エリーナが小声で尋ねる。

アレクサンドルは一瞬彼女を見つめ、言葉を選びながら答えた。「この先で待っている決断が……俺たちの未来を大きく左右することになると思っている。リディアが戻ってくる可能性がある場所も含め、俺たちが進むべき道を明確にする必要がある」

エリーナはしばらく黙って彼の言葉を受け止めていたが、やがて口を開いた。「私も、姉の行方を追い続けることに迷いはない。でも、アレックが何か心に引っかかっているなら、私たちに話してほしい。きっと、私たちも同じように感じているはずだから」

後ろにいたエリオットが歩み寄り、アレクサンドルとエリーナの会話に耳を傾けていた。「アレック、俺たちもきっと、これまで通りには行かない覚悟が必要なんだと思う。リディアを救い出すという目的に加えて、これから何を守り、何を諦めるかの決断が求められているんだろう?」

その言葉に、アレクサンドルは小さく頷いた。「ああ、エリオット。まさにその通りだ。俺たちは、ただの冒険者としてではなく、黎明の翼として一つの目的を持つ者として、何かを手に入れるためには何かを失う覚悟をしなければならないかもしれない」

カリスもまた、これまで無言で山道を見つめていたが、ふと口を開いた。「俺たちの選択によって、無関係な人々が傷つく可能性もある。だからこそ、この選択が正しいのか、俺は常に自分に問いかけてきた。だが、リディアを救うという信念に疑問を持つことはない」

その言葉に、エリーナの目がわずかに潤んだ。「ありがとう、カリス。姉は私たちにとってかけがえのない存在だけれど、それでも、私たち一人一人がそれぞれの未来を築いていくために、今の決断が重要だと思う」

アレクサンドルは深呼吸し、皆の視線を受け止めながら、静かに口を開いた。「俺たちの選択は、たとえ小さなものでも、やがて大きな流れに影響を与えるだろう。リディアを取り戻すことだけが目的ではない。彼女と共に、未来への道を切り開くために、選択を続けなければならない」

皆は静かに頷き、山道を進み始めた。それぞれの胸に抱く思いが交錯しつつも、一歩一歩、確かに彼らの絆が強まっていくことを感じていた。そして、「選択の時」を迎える覚悟ができていた。