ラザルス・ナザルドールは、ナザルドール商会の秘密活動を担当する影の実行部隊の指揮官として、地下の作戦部屋で指示を飛ばしていた。彼は、兄オスリックの指示を忠実に実行し、クレスウェル家に対する陰謀を進める役割を担っていた。
「今回の取引先には、必要な物資を予定よりも数週間遅らせて届けるように指示しろ」ラザルスは冷静な口調で部下に命じた。彼の目には一切の迷いはなく、まるでそれが当然のことのようだった。「表向きは天候や運送の問題にしておけ。クレスウェル家が疑念を抱かないように注意しろ」
部下が一礼し、指示を受けて部屋を出ていくのを見届けたラザルスは、静かに目を細めた。「小さな歯車を狂わせるだけで、大きな機械は機能不全に陥る。それがビジネスの基本だ」
その夜、ラザルスは兄オスリックと共に、次の計画について話し合っていた。彼らの前には、クレスウェル家との取引に関する詳細な記録が並んでいる。オスリックはその記録を一つ一つ確認しながら、冷静な表情を浮かべていた。
「ラザルス、よくやった」オスリックは弟に向かって頷きながら言った。「クレスウェル家の取引相手は、我々が遅延させたことに気づかず、彼らのせいだと思い込んでいる。次は契約内容を見直すように圧力をかけ、彼らが不利な条件を受け入れるように仕向ける」
ラザルスは腕を組みながら、静かに考え込んだ。「クレスウェル家の当主、ガイウスは賢い男だ。いずれ、我々の動きに気づくかもしれない」
「その可能性はある」オスリックはその言葉を受け止めながらも、微笑みを浮かべた。「だが、気づいた時にはすでに遅い。我々が仕掛けた策は、すでに彼らの経済基盤に深く浸透している」
ラザルスは頷き、冷静な目で兄を見つめた。「わかった。次は、彼らが急ぎの取引をしようとする時を狙って、さらに大きな遅延を発生させよう。クレスウェル家が取引相手に信頼を失えば、我々の勝ちだ」
その後、ラザルスは再び部下に指示を出し、クレスウェル家の物流ルートに障害を仕掛けた。ある時は倉庫に火事が発生したと偽り、またある時は重要な物資が盗まれたという情報を流した。彼はすべての出来事を、あたかも偶然のように見せかけることで、クレスウェル家の立場を徐々に悪化させていった。
「全ては影で動くべきだ」ラザルスは独り言のように呟きながら、夜の帳に消えていった。「我々がクレスウェル家を倒すまで、彼らには何もさせない」