森の中にひっそりと佇む廃屋の前で、アレクサンドルは深い呼吸を整えていた。彼の視線の先には、かつて多くの村や町を脅かした盗賊団の残党が潜んでいる。この廃屋を拠点にした彼らも、今ではそのほとんどが内部抗争で命を落とし、わずかな数だけが辛うじて抵抗を続けているに過ぎなかった。
「これが最後の機会ね」リディアが低くつぶやいた。手に握った剣に込められた決意が、その目に宿る。
カリスは苦い表情を浮かべていた。かつて共に行動していた仲間と、今は敵として対峙する現実に、心が揺れないわけがなかった。「奴らはもう逃げ場がない。だが、最後まで抵抗するだろう」
「それでもここで終わらせるしかない」アレクサンドルが冷静に応じる。その目には確固たる決意が宿り、仲間への信頼が感じられた。
エリオットが廃屋の周囲を見渡しながら計画を整える。「正面からは行かないほうがいい。まずは外周を抑えて、逃げ道を塞ぐんだ」
一人ずつ静かに頷き、四人は別々の持ち場に散らばった。互いに見えない位置に移動しながらも、信頼感は失われていない。彼らは言葉を交わさずとも、一致団結していた。アレクサンドルの合図で、夜の静寂が一瞬で破られ、廃屋に向かって静かに進軍を開始した。
激しい戦いの末、廃屋に潜んでいた盗賊たちは全て制圧された。冷たい夜風が廃屋の中を吹き抜け、戦いの終わりを告げる静寂が訪れた。アレクサンドルは、立ち尽くすリディア、エリオット、カリスに目を向けると、静かに口を開いた。
「今の私たちは、ただ個別に戦う者たちだ。しかし、この場を共にしたことでわかった。この道を、共に進むことができる仲間だと」
リディアが少し微笑みながら頷いた。「私も……これから先も、剣を通じて信頼できる仲間と戦うためにここにいる」
エリオットは小さく肩をすくめ、「まぁ、誰かが計画を立ててやらないと無茶をしそうだしな」と軽く冗談めかして応じた。
そしてカリスも、再び仲間として迎えられた喜びを噛み締めるように「俺にはもう、この先を一緒に進む仲間がいる」と短く答えた。
こうして、彼らは「黎明の翼」として正式に手を組み、新たな目的と希望を胸に抱きながら、暗い時代の中に光を灯す存在として旅を始めることを誓い合った。