ティヴェリアン家との関係改善への一歩
エリディアムにあるクレスウェル家の館は、長い戦乱の後もなお、格式と誇りを保ち続けていた。しかし、その内部には、戦いに疲れた家族の姿がある。そんな中、ガイウスとアンナは客間でティヴェリアン家の使者を迎え、長年にわたる同盟関係を再び強固なものにしようとしていた。
「ティヴェリアン家との関係は、我々クレスウェル家がここまで守り抜いてきた大切な絆です」と、ガイウスは穏やかだが芯のある声で話し始めた。「今こそ、我々は互いに協力し合い、新たな時代に向けて手を携えねばなりません」
アンナもその横でうなずきながら、ティヴェリアン家との関係を再構築するための具体策を丁寧に説明していく。彼女は、この交渉にかける真剣な想いを言葉に込めていた。「フィオルダス家の縁談が難しい状況であるからこそ、ティヴェリアン家との協力は一層大事です」と彼女は続けた。
やがて話題は自然とレオンとカトリーヌ・ティヴェリアンの縁談へと移っていった。アンナは少し言葉を選びながらも、こう続けた。「カトリーヌ殿は才気あふれる女性で、レオンも彼女には一目置いているようです。もっとも、家柄や政治的な利害を超えて、二人が心を通わせるようになることが一番ですが」
ティヴェリアン家の使者は、クレスウェル家の姿勢を真摯に受け止めた。慎重ではあるものの、両家が築いてきた信頼を再確認し、丁寧に会話を進めていく様子は、これからの協力の兆しを感じさせた。
別室でこの話を耳にしていたレオンは、複雑な思いを抱いていた。カトリーヌのことは決して嫌いではないが、自分の結婚が政略の一環として扱われることに対する抵抗感が拭えない。彼は自分の気持ちと家の重責の間で揺れていた。
そんな中、レオンの心にはアンナ・フォーティスの存在も浮かんでいた。彼女はただの雑貨屋の店員だが、彼にとっては特別な存在であり、心を安らげる存在だった。アンナと共にいる時の穏やかな日々を思い出しながら、彼は自分の現実とのギャップに戸惑いを覚える。
「この先、僕はどんな選択をするんだろうか……」と、レオンはふと自問した。しかし、今はクレスウェル家を守るため、自分にできる最善のことを尽くす時だと、彼は心を引き締めた。
ガイウスとアンナの話し合いが終わり、ティヴェリアン家の使者が館を後にする時、アンナはその背中を見送りながら、これが新たな協力への第一歩であることを願わずにはいられなかった。そして、家族の再興を支えるべく、それぞれが自分の役割を果たしていく決意を新たにしていた。