フィオルダス家との縁談交渉
アレクサンドル、レオン、エリーナがカストゥムへ旅立った後、エリーナは両親と共にフィオルダス家を訪れ、クレスウェル家再興のための大事な交渉に挑むこととなった。エリディアム全体の発展も視野に入れたこの縁談を、確実に進めることが彼女の使命だった。
道中、馬車の中は静まり返っていたが、そこに宿る緊張は誰もが感じていた。リディアは心の中で何度も言葉を練りながら、両親の様子を窺った。母アンナは彼女の手を握り、温かく見守っている。父ガイウスは険しい顔つきだが、その瞳には娘への信頼が宿っていた。
「リディア、大丈夫だな?」とガイウスがふいに尋ねると、リディアは強く頷いた。「はい、お父様。私たちの未来のために、必ず成し遂げます」
フィオルダス家の広大な屋敷に到着すると、当主エドガー・フィオルダスと長男マルコムが彼らを迎えた。エドガーは品格を纏った堂々たる姿で、一家をまとめ上げる気迫がにじみ出ている。一方、マルコムは穏やかで、リディアに向ける眼差しには温かさがあった。
「クレスウェル家の皆様をお迎えできて光栄です」エドガーは礼儀正しく一礼し、客人たちを広間へと案内した。
交渉の場で、ガイウスは両家の長い歴史と友情を語り、再び縁を結ぶことがエリディアム全体にとっても有益であると説いた。アンナはクレスウェル家の復興が地域の安定と繁栄につながると強調し、柔らかながらも説得力のある言葉で話を進めていった。
マルコムは真剣に両親の話を聞いていたが、その視線は度々リディアに向けられていた。彼は、かつてリディアと共に過ごした時間を思い出しながら、彼女の再興への情熱と美しさに魅了されていた。リディアが失踪していた2年余りの間、彼はひそかに彼女の無事を信じ、待ち続けていたのだった。
エドガーがやがて話の流れをリディアに向け、重々しい声で尋ねた。「リディア様、あなたがこの縁談を通じて、我がフィオルダス家とどのように協力し、何を目指していくおつもりか、伺いたい」
リディアは深呼吸をし、まっすぐにエドガーの目を見つめた。「私はクレスウェル家再興のためだけでなく、エリディアム全体の発展に貢献したいと考えています。共に未来を築くことで、私たちの家も、この地も、さらに輝かしいものにできるはずです」
マルコムはその言葉にほのかな笑みを浮かべ、彼女への信頼と共感を示すように頷いた。「リディア様のその願い、ぜひとも我が家と共に実現していきたいと思います」
エドガーもまた、リディアの真摯な言葉に納得したようだったが、表情には慎重さが残っていた。「よくわかりました。我が家としても、この縁談に全力を尽くす用意があります。ですが、この結びつきがいかに重要かを忘れずに、共に前進していきましょう」
リディアの決意は確かにフィオルダス家に届いた。両家の未来を託された彼女は、胸に新たな希望を抱きながら、これからの道を切り開く覚悟を改めて固めたのだった。