フィオルダス家の決断
マルコム・フィオルダスは、リディアから預かった提案を胸に、自らの足でフィオルダス家の広大な居城へと戻った。家族や側近たちが集まる会議室に入り、皆の視線が集中する中、彼は深呼吸を一つして、話を始めた。
「黎明の翼との協力についての提案です」と、重々しい口調で告げるマルコム。その言葉に、部屋の空気は一瞬にして緊張に包まれた。当主である父エドガー・フィオルダスは、鋭い眼差しを向け、沈黙のうちにその言葉の意味を噛み締めていた。
「マルコム、それは我々にとってどれほどの危険を意味するのか?」と、エドガーは重々しく尋ねた。彼の声には貴族としての重責と、家族を守りたいという父親としての思いが交錯していた。
マルコムはその問いに、冷静ながらも力強く応じた。「確かにリスクはあります。しかし、クレスウェル家や黎明の翼は我々の盟友となり得る存在です。月の信者たちがアウレリア全土に及ぼす脅威を考えれば、手をこまねいているわけにはいきません」
側近たちの間から、ざわめきが起こる。「しかし、もしこの同盟が失敗すれば、我が家がどうなるか分かっていますか?」と、心配そうに発言する者もいた。マルコムはその声に深くうなずき、心の内でリディアの言葉を反芻した。「私たちは守りたいものを守るために共に戦うんだ」
エドガーは沈黙を守りながら息子の顔をじっと見つめ、家族としての誇りと軍事的な指導者としての決断のはざまで葛藤していた。しかし、やがて口を開き、「この危険な時代にあって、ただ守りに入るのは敗北を意味する。マルコム、君の提案を支持しよう。ただし、家族の安全には最善を尽くすことを忘れないでくれ」と告げた。
部屋に安堵と緊張が交錯し、マルコムは心の中で力強く頷いた。家族の支えを背負いながら、彼は新たな未来への一歩を踏み出す決意を新たにしたのだった。