危険な情報交換
薄暗い書斎の中、アレクサンドルは重々しい空気を感じながら、アレナが遠隔念話の準備を整えるのを見守っていた。エリオットが資料を並べながら、深刻な表情でうなずいた。「灰燼の連盟はこれまでずっと警戒していた。我々に心を開くには時間が必要だろう」と彼は低くつぶやいた。
アレナは息を整え、瞳に緊張の色を浮かべながら頷いた。「準備はできました。彼らとつながります」と宣言すると、意識を集中し始めた。彼女の顔に浮かぶ真剣な表情は、どんな困難にも負けない決意を物語っていた。アレクサンドルはその背中に手を添えて励ました。「無理はするな。状況が悪化したらすぐに切れ」
念話が開かれた瞬間、冷たい声が響いた。「こちらセリーヌ・アルクナス。何の用だ?」。灰燼の連盟のリーダーであるセリーヌの声は、氷のように冷たく、それでいて確かな威厳を持っていた。アレナの顔が一瞬こわばったが、すぐに平静を取り戻し、彼女は毅然と答えた。「月の信者たちの新たな動きについて、我々は協力を求めます」
セリーヌの沈黙は長く、会話の中に緊張が張り詰めた。しかしその沈黙の背後には、冷静に状況を分析し、慎重に決断を下そうとする賢明な思考が流れているのがアレクサンドルには伝わってきた。彼は喉の奥が渇くのを感じながらも、冷静さを保とうとした。
「協力には条件がある。そちらの動向を明かす用意があるのか?」セリーヌの声は一層鋭く響いた。アレクサンドルは眉をひそめ、言葉を選んだ。「我々は黎明の翼として、エリディアムの安全を守るために戦っている。お互いに利益のある協力関係を築くべきだ」
その言葉を聞いたアレナの瞳が一瞬和らぎ、続けざまに彼女はセリーヌに問いかけた。「月の信者たちがカストゥムで不穏な動きを見せています。情報を共有してくれませんか?」一方、エリオットは声には出さないが内心で焦りと期待が入り混じる感情を抱えていた。
セリーヌの返答は短く、端的だった。「情報は後日、必要と認めたときに伝える。それまではこちらの動向に関わらないことだ」それだけを告げて、念話は途切れた。
会話が途絶えると、アレナはゆっくりと目を開き、額に汗を浮かべながら深呼吸をした。「接触は成功しましたが、彼らはまだ疑っているようです」と彼女が告げると、アレクサンドルは少しだけ唇を引き締めた表情で頷いた。「今はそれでいい。これからの道を探るための一歩は踏み出せた」
部屋に流れる重い空気の中、エリオットはふと笑みを浮かべた。「次はもっと多くを引き出してみせるさ」その言葉には、彼の中に芽生えつつある自信と期待が宿っていた。