取引または対立の選択
黎明の翼と灰燼の連盟が緊張に満ちた沈黙の中で対峙していた。お互いの理想が異なることを明確に理解しながらも、その場で争うことを避けるべきかどうか、互いに心の奥で揺らいでいた。
アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチは冷静な眼差しで相手を見つめ、相手側のリーダー格であるセリーヌ・アルクナスが放つ威圧感に対抗するように、一歩も引かずに立ち続けた。彼の側に立つリディアは剣を少し構え、周囲の状況を常に警戒していたが、心の中でアレクサンドルの判断に従おうと決意を固めていた。
セリーヌの眼差しは鋭く、彼女は冷静に黎明の翼の面々を見渡していた。「あなたたちは自分たちの理想を貫くためにここにいるのでしょう?それならば私たちと争うか、共に歩むか、そのどちらかを選ばなければならないのでは?」と、問いかけるように静かに口を開いた。
アレクサンドルはその言葉を慎重に受け止めながら、一瞬視線をリディアに投げた。リディアもまたセリーヌの言葉を真剣に受け止めていたが、灰燼の連盟が彼らの信じる正義とは大きく異なることを感じていたため、口を開かず彼女の言葉に耳を傾けていた。エリオットは少し不安そうな表情を浮かべながらも、手にした杖をゆっくりと構え直し、戦闘に備える意識を僅かに覗かせていた。
「私たちが求めるのは真の正義だ」とアレクサンドルが低い声で切り出した。「しかし、そのために民を犠牲にするようなことはできない。あなたたちのやり方に正義があるとは思えないんだ」
セリーヌはその言葉に静かに微笑を浮かべたが、その笑みには冷たさが含まれていた。「それはあなたの理想だ。だが、私たち灰燼の連盟が選んだのは、力によってこそ秩序がもたらされるという現実。あなたたちがそう考えるのなら、それを証明してみせるがいい」
リディアは耐えかねて一歩前に出た。「力を行使して人々を苦しめるような方法が正義だと言うの?」と、鋭い眼差しで問いかけた。
その沈黙を見て、アレクサンドルは内心で逡巡を抱えながらも、平静な態度を崩さなかった。「選択を迫るのはあなたたちの自由だが、私たちもまた我々の選択を貫くつもりだ」とアレクサンドルは毅然とした態度で応えた。「我々が取引を選ぶか、対立を選ぶか……その決断を下すためには、今ここでの戦闘は避けたい」
アレクサンドルの言葉に、セリーヌはしばらくの沈黙の後、軽く頷き、僅かに剣を下ろした。「今日のところは、それを認めましょう。しかし、再び出会った時、同じ選択が通じるとは思わないことね」
双方が互いに冷静さを保ちながらも、胸の内に確かな緊張を感じていた。