孤独な影、光を求めて
夜が更け、ノクティス近郊の荒廃した村の廃墟にひっそりと灯る小さな焚き火。その火のそばで、カリス・グレイフォークは仲間とともに身を潜め、次の襲撃計画についての話に耳を傾けていた。彼らはこの地を根城にし、村を通りかかる無防備な旅人や商人を標的にしては、その日暮らしを続けてきた。
「次の標的は山道を越える商隊だ。今回はたっぷり儲けが出るだろうよ」と仲間が低い笑い声をあげ、仲間たちはその話に乾杯をしている。だが、カリスの顔には暗い影が差していた。自分の内に沸き上がる違和感を感じつつ、彼は外に出て、冷たい夜風に当たりながらひとりで思いに耽った。
「こんな生活を続けて、俺はどこへ向かおうとしているんだろうか……」
そのとき、遠くから複数の足音が近づいてくるのが聞こえた。顔を上げたカリスの視線の先に立っていたのは、かつて彼が裏切った盗賊団の一団だった。闇にまぎれたその男たちは静かに彼を取り囲み、リーダー格の男がカリスに向かって冷たく言い放った。「裏切りの代償を払う時が来たぜ、カリス」
カリスは瞬時に短剣に手をかけ、反射的に構えたものの、相手の数は圧倒的で、逃げ場はない。しかし、そんな彼の目の前にふいに人影が現れた。黒いフードを被ったその影は、鋭い動きで敵の集団を切り崩していく。
「無駄な血を流させるつもりはないわ」
その声の主はリディア・クレスウェルだった。彼女はフードを下ろし、冷静な目で敵を見据えながら、鋭い剣技でカリスの敵を瞬く間に打ち倒していく。その姿を目にして、カリスは言葉を失った。
敵が逃げ去ったあと、カリスはリディアに向かって言葉をかけた。「どうして、俺なんかを助けたんだ……?」
リディアはその問いに振り返りもせず、静かに答えた。「あなたが変わる選択をしたいと思うなら、そのための道が開けるはずよ。今を捨てる勇気さえあれば」
リディアのその言葉が、長い間暗闇に埋もれていたカリスの心に、光を射し込んだ。そして、その言葉に導かれるようにして、カリスは次第に自身の歩むべき道を模索し始めた。この一夜が彼の人生における転機となり、のちに「黎明の翼」として新たな仲間たちと戦い、光のもとで生きる選択をするきっかけとなったのだった。