文書の過去の版を表示しています。
孤独な影、光を求めて
カリス・グレイフォークは、今でこそ黎明の翼の重要な仲間として活躍しているが、彼がこのグループに加わる前の人生は、常に危険と裏切りに満ちていた。元々、彼は無法者の一団に身を置き、盗賊としての生活を送っていた。そんな彼の人生が大きく変わる出来事があったのは、ある夜のことである。
その夜、カリスは荒廃した小さな村の廃墟の中で、再び仲間と共に物資を奪うための計画を練っていた。彼らは孤独な商人や旅人を狙い、素早く物資を奪っては姿を消すという、無情で冷酷な手口で生き延びていた。カリスはこの生活に嫌気が差していたが、自分には他に行く場所も、頼る者もいないと思い込んでいた。
「俺たちはこれでいいんだ……この世界では、強者が全てを手に入れる。それが俺たちの道さ」
仲間の一人がそう言い、酒をあおりながら笑い飛ばす。カリスもその言葉に一瞬頷いたが、心の奥底では疑問が渦巻いていた。自分が本当に望んでいるものは、こうした力と恐怖で成り立つ生活なのか。彼は静かに外の冷たい夜風に当たりに出た。
「このままじゃ、何も変わらない……」
カリスは静かに呟いた。彼は心の中で、ずっと何かを求めていた。それは自由か、それとも自分を変えるきっかけか。そんな時、彼の視界に黒ずくめの一団が現れた。彼らは、かつて彼が裏切りを働いた組織の者たちだった。復讐のためにカリスを追い続けていたのだ。
「見つけたぞ、カリス。お前に裏切りの代償を払わせる時が来た」
リーダー格の男が鋭い目を光らせ、彼に向かって歩み寄る。カリスは即座に反応し、腰にある短剣に手をかけたが、相手の数は多すぎた。彼一人では到底勝ち目がない。だが、逃げるわけにもいかず、彼は覚悟を決めて戦う準備をした。
その瞬間、カリスの背後から風のような動きが現れた。一瞬で敵の一団の前に立ちふさがったのは、フードを深く被った女性剣士だった。彼女の素早く的確な動きによって、敵の数は一気に減り、カリスは一時の混乱に乗じて後退することができた。
「お前は……誰だ?」
カリスは混乱したまま、その女性に問いかけた。彼女はフードを外し、その下から現れたのは、凛とした目を持つ女性だった。
「私の名前はリディア・クレスウェル。あなたを助けるために来たわけじゃない。ただ、無駄な血を流すのを見過ごせなかっただけ」
彼女の言葉には冷たさがあったが、その一方でカリスは彼女の強さに惹かれるものを感じた。リディアの助けによって、彼は命拾いしたが、同時に彼女の存在が彼の中で一つの変化をもたらしていた。
「どうして、俺なんかを助けたんだ?」
カリスが再び問いかけると、リディアは振り返らずに答えた。
「人は変われる、カリス。あなたがその選択をするなら、誰にでも新しい道は開かれるはず」
その言葉は、カリスの心に深く刻まれた。彼は自分の中にある暗闇と戦いながらも、新しい道を模索することを決意した。それが、後に彼が黎明の翼に参加し、仲間として共に戦うことになるきっかけだった。