家族への報告と新たな一歩
アレクサンドルの実家はロマリウス邸から目と鼻の先にあった。結婚の許可を得たアレクサンドルとマリアナは、ほっとした表情を浮かべながら、次はアレクサンドルの両親に報告するために実家へと向かっていた。道中、二人は新しい未来への期待に胸を膨らませながらも、これからの責任の重さを噛みしめていた。
家に着くと、アレクサンドルの両親、ヴィクターとマリアが出迎えてくれた。実家の温かい雰囲気が、これまでの緊張を少しずつ和らげてくれた。広間に通された二人は、さっそくこれまでの経緯を両親に話し始めた。
「父さん、母さん、話があるんだ」とアレクサンドルが静かに切り出した。「僕はエルドリッチ商会を継ぐことにした。伯父のオスカーからも許可を得た。だけど、マリアナと結婚してロマリウス家に入ることになって……ヴァン・エルドリッチの家名は残せなくなるんだ」
ヴィクターはしばらく考え込むように目を細めたが、すぐに穏やかな表情に戻った。「家名にはこだわりはないよ、アレクサンドル。お前が決断したことなら信じる。それよりも、兄のオスカーが承諾してくれたのか?」
アレクサンドルがうなずくと、母のマリアが優しく微笑んだ。「それなら何の心配もないわね。あなたたちが幸せでいてくれることが一番大事よ。二人とも本当におめでとう」と言いながら、二人を祝福した。
ヴィクターも安堵した様子で「よくやったな」と肩を叩き、家族の温かな絆がそこに感じられた。
話がまとまりかけたとき、ふとマリアナが思い出したように目を見開いた。「あ……アレナ・フェリダの雇用の件を、まだ話せていなかったわ!」
アレクサンドルも「ああ、そうだったな」と笑い、二人は再びロマリウス邸を目指すことにした。肩を並べながら歩き出す二人の姿は、どこかほほえましく、これからの困難を共に乗り越えていく決意を物語っていた。