密かな盟約
オスリック・ナザルドールは、自らの商会の会議室で書類に目を通していた。蝋燭の炎が彼の顔を照らし、冷徹な表情が浮かび上がる。ナザルドール商会が長年築き上げた経済的ネットワークは、エリディアム全域に広がっていたが、クレスウェル家の影響力を排除するにはさらに協力が必要だった。
その時、扉が開き、アルヴァレス家の当主であるアントニオ・アルヴァレスが現れた。オスリックは立ち上がり、彼を迎え入れた。「アントニオ、遠路はるばるご苦労だった。君がここに来てくれるとは心強い」
アントニオは静かに微笑んだ。「オスリック、我々には共通の目的がある。クレスウェル家を排除するために協力するのは、双方にとって利益となるだろう」
二人は着席し、机の上に広げられた地図と契約書類を見つめた。オスリックは、取引先の一覧を指でなぞりながら言った。「クレスウェル家が保持している貿易契約の一部は、我々が接触している商人たちとも重なっている。彼らが我々と契約を結ぶように仕向ければ、クレスウェル家の経済基盤に打撃を与えられる」
アントニオは頷き、冷静な目で資料を眺めた。「我々はすでに、クレスウェル家の貿易先に対して新たな条件を提示している。問題は、彼らがクレスウェル家との契約を破棄するだけの理由を見つけ出せるかどうかだ」
「それについては、私に任せてもらいたい」オスリックは自信に満ちた声で言い、アントニオの目を見つめた。「ナザルドール商会が持つ影響力と、裏での取引の情報網を駆使すれば、取引先に我々の条件を選ばせるように仕向けられる」
アントニオは満足そうに微笑み、「君の手腕にはいつも感心させられるよ、オスリック。我々の計画が成功すれば、クレスウェル家はエリディアム内外で孤立するだろう」と応じた。
二人は、その後さらに細かな契約の改訂や、新たな取引の戦略について議論を続けた。オスリックは、アントニオが冷静かつ慎重な判断を下すことを知っていたため、彼の提案に対しても的確な修正を加えることを忘れなかった。
「では、これで決まりだ」オスリックは、決定事項をメモに取りながら宣言した。「我々は協力し、クレスウェル家の影響力を一気に削ぎ落とす。彼らが次に動く前に、全ての取引先を手中に収めるつもりだ」
アントニオは立ち上がり、手を差し出した。「我々の盟約が成功し、エリディアムに新たな秩序を築くことを期待しよう」
オスリックはその手をしっかりと握り返し、微笑んだ。「共にクレスウェル家を歴史の舞台から消し去ろう」
夜が更け、二人は再びそれぞれの拠点へと戻った。オスリックは商会のオフィスに戻り、クレスウェル家を陥れるための新たな指示を部下に与え始めた。「影の中で動くのが我々の役目だ。誰にも気づかれぬよう、計画を進める」
彼の瞳には冷たい光が宿っていた。「クレスウェル家が我々の策に気づく前に、全てを終わらせる」