沈む館で、支え合う姉妹
リディアは、かつてのクレスウェル家の広間に佇んでいた。かつては賑わいと活気に満ちていたこの場所も、今では閑散としている。壁に飾られた家の紋章も、かつて誇らしげだったが、今はその意味を失ったかのように色褪せて見えた。
「お姉様……」声が背後からかかる。エリーナだった。まだ幼さの残る彼女の瞳には不安と混乱が浮かんでいた。リディアは少し微笑んで、妹の肩に手を置いた。「大丈夫よ、エリーナ。私たちはまだここにいるわ。クレスウェル家は簡単に消えてしまうわけじゃない」
エリーナは少しだけうなずいたが、その表情には陰りが残っていた。「でも、レオン兄様はどこにいるの? お父様もお母様も、ずっと険しい顔をしてるし……。もう、前みたいに楽しく暮らせないの?」
リディアはその言葉に一瞬、胸を締め付けられるような痛みを覚えた。しかし、彼女は決してその感情を表には出さず、エリーナに安心感を与えようと努めた。「そうね、今は大変な時期だけど、私たちが一緒にいればきっと乗り越えられるわ。レオン兄様もきっと帰ってくる。だから、エリーナ、泣かないで。私たちは強いんだから」
エリーナは涙をこらえながら、頷いた。「お姉様がそう言うなら……信じる。でも、私も強くならなくちゃ。お姉様みたいに」
その言葉に、リディアは目を見開いた。エリーナが自分に憧れていることは分かっていたが、こうして直接言葉にされると、彼女自身もまた弱音を吐けない立場であることを再認識させられた。
「そうよ、エリーナ。私たちはクレスウェル家の娘なんだから、どんな困難だって乗り越えられる。だから、私が守るから、安心してね」リディアはそう言って、妹の頭を優しく撫でた。その手に少しの震えがあったことは、エリーナには分からなかった。
リディアは自分自身にも言い聞かせるように、心の中で繰り返した。たとえクレスウェル家が没落し、家族が離れ離れになりそうでも、自分が立ち続ける限り、エリーナを守ると。今はただ、その誓いが彼女の心の支えとなっていた。