灰の中から立ち上がる者たち:灰燼の連盟結成
アウレリア大陸の南部。夜が深まり、澄んだ空に星々が瞬いていた。そこに広がる荒涼とした地帯は、かつて繁栄を誇った都市の跡であり、今は灰と瓦礫に覆われている。戦争の爪痕が色濃く残るこの場所で、3人の運命が交錯した。
セリーヌ・アルクナスは、夕暮れの光がまだ微かに残る頃にその場所に到着した。彼女の鋭い金色の瞳が、廃墟の先に見える人物に向けられた。彼女の手には美しい装飾が施された長杖が握られており、その先端は魔力でほのかに輝いている。戦闘経験に裏打ちされた落ち着きがその歩みには表れていたが、彼女の心はこれから始まる会合に対する微かな緊張感で満たされていた。
廃墟の中央、かつての広場に近づくと、彼女が待っていた人物が姿を現した。イリア・マリウス。長い黒髪と鋭い顔立ち、彼の冷静な表情は、多くの陰謀をくぐり抜けてきた者のものだ。黒いローブが彼の動きに合わせて揺れ、彼が手にした古びた書物が風にそよいだ。「来たか、セリーヌ。あとはマルコスを待つだけだ」彼の声は低く、しかし確信に満ちていた。
「マルコスが遅れるなんて珍しいわね」セリーヌが短く答えると、イリアは薄く笑みを浮かべた。「彼もまた、多くのものを背負っているのだろう。この同盟に賭けるものは、我々だけではない」
その時、遠くから重い足音が響いた。巨大な影が近づいてくると、彼の大柄な体格が闇夜の中に浮かび上がった。マルコス・グレヴィスは、重厚な鎧を身にまとい、その鋭い眼差しで二人を見つめた。「遅れてすまない、少し考えることがあった」彼の声は地響きのように低く、堂々としていた。
「考えること?」イリアが首をかしげる。「我々がここに集まった理由は、すでに明確だと思っていたが」
マルコスは眉をひそめた。「確かに。だが、我々がこれから行おうとしていることが、どれほどの代償を伴うかは、誰にも分からない」彼の言葉には重みがあり、セリーヌも静かに頷いた。
「灰燼の中から立ち上がる。それが我々の目的よ」セリーヌが静かに言葉を紡ぐ。「私たちは、ただの復讐を望んでいるわけではない。過去の遺産や栄光に縛られない、新しい世界を築くために、この同盟が必要なの」
「その通りだ」イリアが続けた。「だが、我々が求める力は危険だ。月の信者や高位聖職者たちが利用しているような力を操ることになるかもしれない。我々の計画は、世界そのものに大きな影響を与える」
マルコスは深く息を吐いた。「それでもやるしかない。我々の国も家族も、すべてを失った。だがその中で残されたものがある――この手にある力だ」彼は拳を握り締め、拳にこもる力を感じるかのように目を閉じた。
三人は再び沈黙に包まれた。彼らがこれから行うことが、どれだけの運命を巻き込むか、誰にも予測できない。だが、それでも彼らは進むしかなかった。
「なら、これで決まりだな」イリアが、静かに手を差し出した。「灰燼の連盟、今日ここに結成する」
セリーヌとマルコスも、それぞれの決意を胸に、手を重ねた。「私たちはこの世の終わりを目の当たりにしたが、それでも生きている。そして新しい秩序を作り出す」セリーヌが力強く言葉を放つ。
「灰燼から生まれるのは、破壊だけではない。新しい希望もまたそこにある」マルコスが静かに呟いた。
こうして、「灰燼の連盟」は誕生した。彼らが抱く野望は大きく、そしてその力を手にするために選んだ道は決して平坦ではなかったが、彼らの決意は揺るがなかった。三人が織り成す運命の糸が、これからどのような歴史を紡ぐのかは、まだ誰も知らない。
そして、その物語は、黎明の翼の誕生よりも前の暗闇の中で始まったのである。